生き残るための3つの取引 ★★★☆

BAD DEAL
2011 スコープサイズ 119分
TJOY京都

■連続幼女殺害事件の犯人逮捕に焦った警察は犯人捏造をチェ刑事に命じる。一方、義父のコネで出世を狙う汚職検事が彼に遺恨を抱き、計画は思わぬ方向に転じてゆく・・・

■警察、検事、ヤクザの裏社会での複雑な癒着関係をベースに、彼らの辿る残酷な運命をギリギリと追いつめてゆく”人の悪い”犯罪映画の力作。韓国映画のパワーを十二分に感じさせる作品だ。東映の実録映画路線の作風に近いと言えるだろう。今の日本では決して描けない世界を描いていることは確かだ。

■リュ・スンワンの演出は意外に節度があり、グロテスクな残酷描写は避けて、ドラマ自体の緊張感で見せきる。特に、主人公の刑事の陥るこの世の地獄とも呼ぶべき皮肉で過酷な運命は、よくぞ描ききったといえる。映像的な残酷描写は無いのだが、もっとエグイ設定とか描写がさり気なく織り込まれるところが、この監督と脚本の、ほんとうに人が悪いところで、犯人に仕立て上げられる男の一家とか、主人公の部下の刑事の一家の描写とか、絶対に今の日本映画では表現できないだろう。この監督と脚本は鬼だと思う。ちなみに脚本はパク・フンジョンで、残酷と評判の「悪魔を見た」も書いている。しかし、それは韓国だけでない現代社会のリアルを巧みに表現しているともいえるから、余計始末が悪く、観た後に胃にもたれるのだ。

■ただ、役者の演技については、かなり荒っぽく、特に検事役のリュ・スンボムの演技にはもう少し抑制が欲しいところだ。

■監督は「真実はいつもあまりに意外。本人は死闘を演じたつもりなのに単なる空騒ぎでしかない。その無力感を描きたかった」と語っている。全く、そのとおり、狙い通りによくできた映画だ。

■T−JOY京都で観たのだが、観客は私ひとりだった。ありそうで、なかなか無い経験だよ。

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