意外にも重厚なテーマ性をサクサク物語る韓流活劇の快作『デシベル』(感想/レビュー)

基本情報

デシベル ★★★☆
2023 スコープサイズ 110分 @T-JOY京都

感想

■一定の騒音を感知すると時限装置が急加速する特殊な時限爆弾が釜山市内に設置された。なぜか犯人からコンタクトされた元潜水艦の副長は指示された場所に急ぐが。。。

■という韓国映画おなじみのサスペンス・アクションで、監督はファン・イノという人。爆弾犯とのゲームの駆け引き的な軽サスペンス映画をイメージしていたのだが、実は米国との連合軍事演習を終えて帰投中の潜水艦が遭難するという過去の事件が絡む、意外にも重厚なサスペンス活劇だったので驚くやら嬉しいやら。映画はサクサクと軽快に展開するし、意外にもテーマ性は重いし、80から90年代のハリウッド映画を想起させる快作だった。こんな映画は昔はよくあったものだが、最近めっきり公開されなくなった。

■ネタバレは避けるが、事件の背景となる潜水艦遭難事件が爆弾事件と並行して語られる語り口も成功しているし、そのテーマ性や批評性もなかなか立派なもの。近年の日本映画では、なかなかこういう芸当はできない。『沈黙の艦隊』なんていかにも空想的かつ地に足の付かない誇大妄想でしかないことがよくわかる。日本映画でやたらと空想的に天下国家を語りたがる政治的活劇が多いのは困りものだが、韓国映画の場合、そうした映画は確実に地に足がついていて、切実さが全く異なる。そこは残念ながら日本映画は児戯に等しい。かわぐちなんとかとか福井なんとかが原作の映画のことですけどね!

韓国映画らしい味付けとして、嫁さんが超キツイという特徴があって、本作でも見事な喜劇要素を加味している。主人公のキム・レウォンの嫁さんは爆弾処理班の最前線でバリバリだし(こちらはコメディ要素なしでした)、巻き込まれる記者役でコメディリリーフのチョン・サンフンの嫁さんも働いていて、職場のテレビでありえない場面を目にする場面は大爆笑の傑作。関西風味のベタベタなコメディ要素は、韓国映画のお楽しみで、こうしたサスペンスとか活劇に挿入することで、非常に効果的。日本映画で下手に真似すると、スベりまくることがあるけどね。

■爆弾事件のギミック的な面白さを狙った若者向け映画かと思いきや、実は潜水艦の遭難事件の方がメインテーマで、その事故の真相(いかにもありそうな不祥事)や、生還するための厳しすぎる究極の決断とか、非常に重い、機微なテーマを突きつけるから、ホントに立派な映画。日本映画でもそういうところを真似してほしいなあ。


参考

日本映画ではせいぜいこんな感じす。全く地に足の付いた切実さがなくて、上滑りで、子供っぽいと感じる。
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