基本情報
ホワイトアウト
原作・真保裕一 脚本・真保裕一、長谷川康夫、飯田健三郎 撮影・山本英夫 照明・本橋義一 美術・小川富美夫 音楽・ケンイシイ
ビジュアルエフェクト・松本 肇 特殊技術・神谷 誠 監督・若松節朗
感想(旧HPより転載)
誰がどう観ても「ダイ・ハード」と「クリフハンガー」をそのままいただいた安直なアクション映画としか思えない企画だが、一応原作は真保裕一の代表作ともいわれる冒険小説の金字塔だからそれなりに勝算があってのことだろうと思っていたら、確かにそのとおりで、単なる亜流アクション映画ではなく、ハリウッド製のアクション映画でも近年なかなか見られないような一ひねりが用意されているからひと安心。
とはいっても主演が織田裕二だから突っ込みどころは満載で、意地悪くニヤニヤと鑑賞するのが正しい姿勢だろう。ラストの松嶋菜々子の救出をめぐるわざとらしい作劇及び演出は興ざめも甚だしいが、日本で大型アクション映画を成功させようとした無謀な冒険にはちょっと加勢したい気はするのだな。
ただし、ホワイトアウトのシーンやクライマックのスヘリコプターを駆使したアクションの見せ場が悉く不発で、明らかにアイディア不足なのはどうしたことか。あれではせっかく集めた樋口組特撮スタッフの実力も発揮できないのは当然だろう。ヘリコプターの墜落シーンなんて「戦国自衛隊」のミニチュア特撮を思い出してほのぼのしてしまったぞ。こうした映画の場合、特撮とバレないことよりも、特撮でしかありえないシーンにいかに観客の想像力を上回るアイディアを投入するかということに勢力を傾けるべきだろう。
さらに不幸なのは、雪山の過酷な環境や、豪雪に閉ざされた巨大ダムのその巨大さといった物語の要となる自然状況や舞台設定自体が映画のキャメラにとって描写力の限界を超えるものであることや、日本の映画館のスクリーンで雪の白さの階調や奥行きを再現できる能力を備えた施設はほとんど望めないという、映画というメディアそのものが抱える技術的限界による制約を受けざるを得ない素材を選択した楽観主義の弊害も如実に露呈していることを忘れてはいけないだろう。
ただ、テロリスト役の吹越満が純粋な二枚目を演じきって秀逸。おそらく、この映画で最もおいしい役だが、貫禄で演じきった吹越満がその昔フライドチキン男だったことを覚えている者は少ないのだろうな。感無量。
(2000/8/22 ビスタサイズ 浜大津アーカスシネマ)
コメント
■当然のようにデスティニー制作です。
■小滝祥平というプロデューサーは冒険小説が大好きなようですね。なかなか日本では成立しないジャンルだし、女性観客を確保しないと商売が成り立たいのでソフトタッチに仕立て直す必要もあるし、対外交渉含めてアレンジが難しいので、ついつい割り引いて観てしまいますが、単純に失敗作も多くて「デスティニー・クオリティ」と揶揄しています。
■でも本作はできの良い部類だと思いますよ。
参考
デスティニーの冒険映画たち。討ち死にした映画も数々。
maricozy.hatenablog.jp
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