嗚呼、8千人の社員を乗せて、いま山一が沈む!『しんがり 山一證券 最後の聖戦』

■2015年 原作:清武英利 脚本:戸田山雅司 撮影:蔦井孝洋 照明:石田健司 音楽:住友紀人 監督:若松節朗、村谷嘉則

■1998年3月、百年続いた老舗の証券会社、山一證券が自主廃業という形で社歴を閉じた。何故、老舗の巨大証券会社が廃業に追い込まれたのか、その直接的な原因は何だったのか、その動機は?本当の責任者はどこにいるのか?という、なかなか地上波では実現しない骨太なWOWOWドラマ。

山一證券滅亡の歴史を1997年から物語り、本社から切り離された閑職としての業務監理本部のメンバーの視点で物語る実録ドラマ。とにかくその実録ぶりが凄くて、人名は仮名になっているけど、山一證券は実名だし、その不良債務の実態、大物総会屋への利益供与、「飛ばし」や「花替え」の不正メカニズムなども、実際の社内調査報告書のとおりで、呆れるしかない杜撰さと規律軽視の経営判断の泥沼がエグいことになっている。回収不能な含み損が約3000億円あるんだが、次の会長と社長はお前ら、頼むわ。という豪快な名シーンがあって、仰け反る。安心しろ、正確には2600億円だ。世の中、位が上に行くほど、どんぶり勘定なのだ。

■終盤に事件の真相をシニカルな物言いで告白する関連子会社の社長が佐野史郎で、いやあ久しぶりに佐野史郎の胡散臭い演技を堪能した。みんなの好きな性格俳優佐野史郎の面目躍如だと感じた。法律違反の経理不正が横行するようになる原因が法人営業派とリテール(個人営業)派の(「まつりごと」と呼ばれる)派閥争いというのも、なんだか呆れて怒る気もしないという不毛さ。そのために子会社やペーパーカンパニーに含み損を付け回して監査の眼を逃れながら、延々と不良債権を隠し続けてきた経営陣の背信。そんな状況でよく夜寝られるものだと、われわれのような小心な小市民は嘆息するのだが、さすがに、そんなネズミの心臓では出世はままならないわけだ。

■業務監理本部のメンバーが江口洋介萩原聖人、佐藤B作、矢島健一林遣都真飛聖という、なかなか意表を突いた(?)地味な配役だが、萩原聖人の演技を堪能したよ。こんなにみっちり萩原聖人を観たのも何年ぶりだろうか。謎の部長秘書として宝塚の名男役だった真飛聖が登場して、色気を添えるのでなく発破をかけるのも見どころ。ほんとに色気無いのね。。。佐藤B作もキャリアにふさわしい名脇役ぶりです。

■脚本は戸田山雅司だし、あくまで実録に徹して、不要なメロドラマ要素は無し、最低限主人公の家庭だけ描かれるという塩梅も良いと思います。全6話ですが、一気に観ちゃいますよ。映像的にはホントに褒めるところが見当たらなくて、ところどころ色合い(紫色?)が反転しているような杜撰さなのですが、ドラマって、結局お話が面白いと撮影レベルが云々は全く気にならないものなのですよね。。。

参考

原作本はこれですね。買ったけど、まだ読んでない!面白いに決まってる!

なんとアマゾンプライムビデオで見放題!途中でやめられまへんで!maricozy.hatenablog.jp
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