戯曲レビュー:ほほう、こんなのもありか。上田誠の『曲がれ!スプーン』

■実は舞台も映画版も観ていないので、純粋に戯曲として読みました。本当は橋本治文楽の本を探していたのですが、たまたま図書館で発見したのです。「ハヤカワSFシリーズJコレクション」として発売されたところが異色。純粋SFとしての扱いですね。

■『曲がれ!スプーン』はエスパーが密かに集まる喫茶店で、テレビの女性ADを助けるとために、超能力をしょうもない小さなことのために使います。という話で、くだらなさが身上の脱力コメディ。映画版もあるけど、未見。なんだか妙に豪華な配役なので、こんど観ますよ。

■『サマータイム・マシンブルース』はさすがに戯曲で読むのは難しいお話で、SF研の部室でエアコンのリモコンが故障したので、タイムマシンで昨日に行って、持ってこようとするが、というお話で、役者陣のドタバタした早変わりが見どころでもあるらしく、基本的に誰が誰だか途中でわからなくなります。まあ、戯曲や脚本を読むときの基本的なリテラシーなんだけど、素人はつまずく所ですね。特に本作のような登場人物が多い舞台は大変。多いと言っても、まだましです。久保栄の古典的名作(らしい)『火山灰地』なんて、登場人物が50人を超えるらしいからね。

■これも映画版があって、これまた豪華キャストなので、観ておきたいな。瑛太くんが出てるよ。絶対、映画で観たほうが分かりやすいよ。

■でも一番驚いたのは、上田誠の台詞の平易な、というか緩い話術で、クドカンでも三木聡でもない、さらに緩いやり取りがにやにや笑いを誘う。まあ、これまで観た舞台で、いちばん平易な、リアルな若者の日常会話レベルの台詞ですね。基本的に舞台劇って、格調高くて文学的な装飾の多い凝った台詞の応酬というイメージがあるのだけど、こんなにハードルが低いのかと衝撃を受け、かつ刺激を受けました。これでも成り立つのかというね。成り立つんだなあ、これが。

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