基本情報
キングダム ★★★
2019 スコープサイズ 134分 @アマプラ
原作:原泰久 脚本:黒岩勉、佐藤信介、原泰久 撮影監督:河津太郎 撮影:島秀樹 ガファー:小林仁 美術監督:斎藤岩男 美術:瀬下幸治 アクション監督:下村勇二 VFXスーパーバイザー:神谷誠、小坂一順 音楽:やまだ豊 監督:佐藤信介
感想
■ヒット漫画の映画化で、春秋戦国時代の中国で、奴隷の少年が秦国の大将軍を目指すお話。弟の反乱で玉座を追われた秦始皇帝(の若い頃)の身代わりとして親友を殺された主人公信(山崎賢人)は未来の始皇帝(吉沢亮)と対立しながらその「中華統一」の理念に惹かれてゆく。まずは弟から王都を奪取するために、400年前に断絶した「山の民」の軍勢の協力を得ると、宮殿奪取計画を練る。。。
■正直なところ、こうした大規模な中華アクションはすでにたくさん作られていて新味がないし、VFXが頑張ってもだいたいどんなビジュアルが展開されるかも想像できるので、全く食指が動かなかったのだが、ちゃんと面白く観られるウェルメイドな活劇になっているのはさすがですね。いまや日本映画の大作漫画映画請負人、佐藤信介の貫禄を感じます。でも、中国が作っても、ハリウッドが作っても、主人公はヤンキーにはならなかったでしょうね。そこがユニーク、というか、日本人はどんだけヤンキーが好きなのか?という話です。(日本人はなぜヤンキーが好きなのか?誰か研究して!)なので、本来なら東映が作ればいいのだが、完全に東宝映画テイストになってます。監督は黒澤明を意識するし、配役は東宝芸能から高嶋政宏と長澤まさみを供出します。どや、立派な東宝映画だろ!普通なら、いまどきワイプなんて技法使いませんからね!でも、黒澤明といよりも、稲垣浩の香りがするなあ。いい意味で。
■お話も、もっと複雑なものかと思いきや、非常にシンプルで、悪くない。そもそも中国人の名前を音で区別するのも難題だけど、そこは混乱しないように最低限の配慮はしてある。VFXもアクション演出もどこかで観たような趣向だし、主人公の言動なんて、それこそ日本のアニメやトクサツで何千回も観たような話ですが、そのつもりで観れば悪くない。真面目に時代劇、歴史劇として観ると噴飯ものだけど、漫画原作、しかもジャンプ系なので、そのつもりで観る前提ですよ。
■なんだか、「山の民」てみんな大好きなようで、ここでも便利に使われているけど、要はかつての「サンカ」妄想の援用。もちろん中国なので「サンカ」とは呼ばないけど、やっていることは同じで、違う言語を話す異民族あるいは少数民族で、特異な身体能力を持っていて、女は肉感的な妖婦である被差別民という、まさに「サンカ」幻想。それこそ「サンカ」の娘といえば昔は根岸明美が演じた(1954年『魔子恐るべし』)けど、いまは長澤まさみが演じるという、数十年間の東宝映画史が透けて見える配役の妙も、非常に含蓄が深い。そんなこと気にするのはうちくらいで、どこの映画雑誌にも書いてませんけどね!
■でも、東映はこの企画を東宝にとられたのは悔しかったんじゃないかな。完全に東映のお得意な世界観なので、中国ロケはもちろんありとして、ぜひ京都撮影所で撮りたかったよね!というか撮ってほしかった!となれば、脇の配役も変わって、東映系の時代劇キャリアの人にお願いしたいところで、石橋蓮司はやっぱり登場するだろうけど、本田博太郎も出ていたはず!でも、もう年代的に重鎮の役者がいなくなってるから辛いところだなあ。。。