永遠の0 ★★★

永遠の0
2013 スコープサイズ 144分 @Tジョイ京都
原作■百田尚樹 脚本■山崎貴、林民夫
撮影■柴崎幸三 照明■上田なりゆき
美術■上條安里 音楽■佐藤直樹
VFXディレクター■渋谷紀代子 
監督&VFX山崎貴

■例によって現代の若者がおじいさん世代の体験した太平洋戦争を聞き出してゆくお話で、真珠湾攻撃ミッドウェイ海戦といった太平洋戦争のフルコースを白組の卓抜なVFX技術でつまみ食い的に映像化する超大作。だけど撮影はRED EPICによるデジタル撮影で、VFXクルーのクレジットは驚くほど少なく、白組の少数精鋭主義による「根性」で出来上がった戦記映画。

■決して不出来な映画ではなく、特にVFXは質量ともに日本映画の水準を超えている。CGによる空母赤城の雄姿など確かに圧巻である。空撮とCGを合成した空戦場面も実写にしか見えないカットが多く、単純に凄い。でも、すぐに飽きてしまうのも事実で、それ以上のドラマが組まれなければそれ以上の感動には繋がらない。『男たちの大和』『俺は、君のためにこそ死ににいく』で佛田洋が披露したCGとミニチュア特撮の適材適所の采配は、映像が単調にならないようにとの実利的な配慮でもあったのだ。

■おばあさんの最初の連れ合いで、天才的な戦闘機乗りだったものの、卑怯といわれようとも生還することに執着した男がなぜ最終的に特攻作戦で散ったのかという疑問を探求してゆく映画だが、色んなディテールに既視感が多すぎて今更感が拭えない。東宝東映の戦記映画でやりつくされた主題ばかりと感じた。たとえば森谷司郎の「ゼロ・ファイター 大空戦」などと大きくだぶる。そもそも、現代の若者が戦争を生き残った老人に聞き歩くというスタイル自体があまりに類型的で退屈きわまりない。吹石一恵が無駄に綺麗で、ああもったいない。

橋爪功田中泯といった曲者俳優が持ち味を素晴らしく発揮しているのはおおいに見所で、田中泯の青年時代を演じる新井浩文も上手い配役。原作は未読だが、あの役柄は当然日本人ではないという設定だろう。東映映画ならそのあたりをもう少しはっきりと刻印するはずで、東宝ではなく東映で映画化すればよかったのに。新井浩文田中泯のつながりが素晴らしいだけに惜しまれる。逆に相変わらず酷いのが井上真央で、場違い感満点。この人を出しておくと制作上の税金が免除されるとか何か特典があるのかしら。そんな法律いつできたの?

■あ、あと佐藤直樹の劇伴は意外な感があるくらいの力作で、かなりハードなテイストを盛り込んできた。もっとベタベタ甘い感傷的なメロディを乗せてくるかと思いきや、意外などす黒さである。これは聞かせる。

■企画・製作は東宝アミューズ、制作はROBOT。

ちなみに、山崎貴はプロデューサーから原作と企画を聞かされて、率直に「”お金の匂い”がしなくて儲かりそうにないと思った」そうです。
でもやりたい内容ではあるから企画に乗ったところ、結果的に大ヒットになった。
零戦と赤城を観たい観客ニーズはあると踏んで、その2つの映像表現に特に力を注いだそうです。実際、この後『アルキメデスの大戦』で大和を再現して大ヒットしているので、その分析には一理あるわけです。

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