怪獣映画✕三木聡一座の脱力コメディ=円谷プロ!ホントに大丈夫か?『大怪獣のあとしまつ』

基本情報

大怪獣のあとしまつ ★★★
2022 ヴィスタサイズ 115分 @アマプラ
脚本:三木聡 撮影:高田陽幸 照明:加瀬拓郎 美術:磯見俊裕 音楽:上野耕路 VFXスーパーバイザー:野口光一 特撮監督:佛田洋 監督:三木聡

感想

■劇場公開時にやたらと酷評が相次ぎ、みなさんはいったい三木聡の映画とわかって観ているのか?と疑問に思ったところですが、やっと観ることができました。確かにバランスが歪なのは分かりました。酷評を呼ぶのもわからんでもないです。でも、三木聡の映画なので、期待通りの脱力ギャグもちゃんとあるし、狙い所としては実相寺昭雄ウルトラマンだし(言っちゃった!)、ウルトラマンティガの「怪獣が出てきた日」だし、悪くないですよ。問題があるのは、主演の山田なんとか君の風貌が悪人にしか見えないことと、尺が長過ぎることですね。2時間は長いよ。再編集するともっと良くなる気がする。

■特撮的にはさすがに金がかかっているので、できの良いカットは非常にリアル。怪獣を中心に据えたロングショットなどは非常にクオリティが高い。でも、怪獣の身体の上で登場人物が活躍するカットはすべて残念な合成カットだ。特にクライマックスの山田くん絡みの合成カットは全部やり直すべき。中盤の見せ場であるダムバスターのあたりは、やっぱりミニチュアワークで豪快な爆破と濁流を見せてほしかったよね!せっかく佛田洋が特撮監督なんだからね!

■世評が低かったのは、福島原発やコロナ禍を取り込んだ世界観がリアルシミュレーション風に描かれるものの『シン・ゴジラ』ほどの完成度ではないし、コメディ風味もハリウッドのブラック・コメディ風でもない、独特の三木聡ワールドなので、馴染みのない観客は岩松了ふせえりのくだらないおふざけについていけないのも理解できる。特に序盤は全ての脱力ギャグがすべりがちだけど、中盤はいつもの三木聡らしく結構笑える映画になっているので安心したけどね。ただ、怪獣一匹と戦うために徴兵制が敷かれる世界観には違和感があり、そこまでやるならテーマ的には最後に首相が倒されないと画竜点睛を欠くというもの。個人的にはそこが一番引っかかるポイントだった。

■実相寺テイストの「水洗トイレ作戦」「焼肉屋の換気装置作戦」の釣瓶打ちのあたりは素直にサスペンスとスペクタクルも成功しているし、アイディアとしては決して悪くない。いやむしろ王道だと感じる。オダジョー特別出演のダムバスターの活躍は素直に燃えるし、そのおそまつなくだらない結末もちゃんとビジュアルなコメディになっている。染谷将太の無駄遣い、◯◯◯男のシーンも秀逸だと思います。銀杏の次は◯◯◯?居酒屋のメニューか!?は良いと思います。だって◯◯◯は映画に欠かせない要素なのです!だよね?

ウルトラマン好きを公言する珍しい女優、土屋太鳳は『ウルトラマンゼロ THE MOVIE超決戦!ベリアル銀河帝国』のエメラナ姫以来久しぶりに映画で見たけど好演で、ホントに好きそうに演じているので気持ちいいですよ。例のラストシーンなど、ホントに演じて嬉しかったでしょうね。一方で旧友と堂々と不倫してる発展家ですけど、若いからしょうがないよね!だってどうみても精気満々なんだもの。健康的ってことですよ!誤解のないように。

■もともとは松竹主導の企画で動き出したものの、低予算コメディではなく本格的に特撮映画にしたいので東映の参加を求めたという製作経緯は配役に顕著で、西田敏行濱田岳の釣りバカコンビは嬉しいところ。ただ濱田岳が完全にシリアスな役柄なので、二人のアドリブ合戦が基本的にないのは残念。せっかくの二人なのにね。いっぽうで三木組常連の岩松了ふせえりが例によってくだらない掛け合いで大活躍で、特にふせえりは目立ちすぎ。もちろん「布施絵理」時代を知っている世代や『時効警察』ファンにとってはごちそうだけど、一般の観客は戸惑うわなあ。。。なにしろ監督の嫁さんだからね、大役なんですよ!ザ・怪獣に刺さった女!

参考

三木聡はこんな映画を撮っていた人ですよ。でも結構いい映画があるんですよ。
maricozy.hatenablog.jp
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土屋太鳳といえば、これ。これしか知らない。しかもかなりの秀作なんですよ。
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映画と◯◯◯はなぜか相性が良いんですね。◯◯◯といえば、これですね。
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