亀は意外と速く泳ぐ ★★★

亀は意外と速く泳ぐ
2005 ヴィスタサイズ90分
DVD
脚本■三木 聡
撮影■小林 元 照明■堀 直之
美術■常盤俊春 音楽■坂口 修
監督■三木 聡


 平凡かつ退屈な日常を送る若妻(上野樹里)は、ある日目にしたスパイ募集広告により、スパイに採用されてしまう。とりあえずの任務は、目立たずに平凡な日常生活を送ること。だが、ある日、街中に潜むスパイたちに臨時召集がかかり・・・

 テレビや舞台の構成、演出を手掛ける三木聡の監督3作目。(1作目は現在やっと公開中の「ダメジン」)

 ”草”と呼ばれた忍者の生活をモチーフに、緩いコネタギャグの応酬がリラックス効果をもたらすユニークなコメディ映画だが、矢口史靖の「ひみつの花園」などの雰囲気に近いかも。最近は俗受けを狙いすぎてちょっと変質してしまったが。

 上野樹里は天然な雰囲気がジャストフィット。一応若妻なのだが、ぜんぜん色気皆無で、夏休みを持て余すもてない女子高生といった風情なのが面白い。一方非凡な言動で彼女の羨望を呼ぶ同級生が蒼井優で、はじけた演技が巧い対照を形作る。ヅラネタで命知らずな迷演を見せる要潤は、いったいそれほどお笑い好きなのか?

 ハリウッド映画ではコメディといえば頑張りすぎてしまうものだが、こうした緩いコメディ映画というのは確かに今後有望かもしれない。

 いつ訪れるかもしれないその日のために、平凡な日常に埋没し続ける人生とその意味についてもちゃんと作劇に組み込まれており、意外にも懐の深い、いい映画なのである。

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