■ウルトラマンブレーザーは田口清隆がメイン監督だけど、期待の辻本貴則はホントにスポット登板で、もうこの枠ではベテランの武居正能が本編でも特撮演出でも安定感ある熱い演出で期待通りの働きをみせるけど、中川和博がけっこう特異な個性を発揮している。これまでもウルトラマンZ「未確認物質護送指令」「宇宙海賊登場!」とかウルトラマンデッカー「君は君のままで」「過去よりの調べ」のエピソードで素地を見せてはいたが、今回のブレーザーでやっと本領発揮したという感がある。
■ブレーザーでは強敵ニジカガチが登場する「虹が出た 前編」「虹が出た 後編」と終盤の重要作「ソンポヒーロー」「ヴィジター99」を担当したが、とにかく映画並みのじっくりと構えるテンポと安定感ある構図で、なんだか映画を観ているような錯覚に囚われるし、妙に大物感がある落ち着き払った演出が特徴。「ソンポヒーロー」では金井勇太に加えて山口果林(!)を起用して妙に豪華な配役で両者のベテラン演技の妙味を見せるし、特撮演出のビジュアルな弾け方も学習効果が大きい。
■さてそんな中川和博のブレーク作は、以下のPFF入賞の短編映画『怪獣の日』(撮影:田中平太 照明:藤井聡史 VFX:上田倫人 CGI:田村 健 )だ。平田教授その弟子の長峰が登場したり、平成ガメラの影響を隠そうとしないのだけど、怪獣の死骸が漂着したことから怪獣を観光資源として利用して国からの補助金を期待する地方自治体の(浅ましい)姿など戯画として描く狙いは明瞭で悪くないし、その演出も真面目そのものだ。怪獣の特撮シーンで見せるドラマではなくて、あくまで人間側のリアクションのドラマを見せる短編映画。しかも実は2016年の『シン・ゴジラ』より先なのだ。ただ、最後のオチはあれだけでは弱いと感じるので、あくまでドラマの「起」に過ぎないと感じる。
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■その後、毎年開催されるゴジフェスで短編特撮映画を監督し、最新作は以下のようなジェットジャガーの活躍を描く『フェス・ゴジラ4 オペレーション・ジェットジャガー』。非常にオーソドックスなミニチュア特撮のなかに、意欲的な長廻しを取り入れているところに注目したい。撮影は特撮研究所出身の天才キャメラマン・鈴木啓造なので、もっとヴィヴィッドに弾けてもいいところだけど、あくまでオーソドックスで重厚なのが中川和博だ。(残念ながらすでに公開期間を過ぎて、削除されました!)