マタンゴ ★★★

マタンゴ
1963 スコープサイズ 89分
日本映画専門CH
原案■星新一福島正実 脚本■木村武
撮影■小泉一 照明■小島正七
美術■育野重一 音楽■別宮貞雄
特技監督円谷英二 監督■本多猪四郎

本多猪四郎と木村武(馬淵薫)が組むと、どうしてこんなに世界観が頽廃的になるのだろう。本作は手放しで傑作とはいえないが、歪な魅力に溢れている。回想シーンの夜のクラブの場面など、短い見せ場なのに、何故か不健康感に溢れている。土屋嘉男がキノコを食べて幻視するのが、ナイトクラブのヌードダンサーというのは、よくわからないのだが。

■本多演出で頻出し、何故か演出が冴える雨の場面も、マタンゴの島で設定されていて、ここではマタンゴの成長に大きな役割を果たしているし、難破船へのマタンゴ人間の侵入にも効果的に使われている。佐原健二がロープを掴んで落下してゆく最期の場面の演出など、さらりとしているが実に上手い。

■ドアを開けてマタンゴ人間が顔を現したショックシーンがフェードアウトして次の日に繋がるという、珍しい編集もあり、普通なら、主人公たちが必死で追い払ったとか、勝手に逃げて行ったとか、受けの芝居があるはずなのに、ばっさりと省略してしまい、観客がストレスと違和感を溜め込まされるという不思議な演出を見せる。こうした微妙な違和感の積み重ねが木村武と本多演出が組んだときの変な魅力になっている。普通のハリウッド映画ではこうはいかない。


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