■阿刀田高サスペンスという関西テレビ制作による1時間枠のシリーズがあったことすら知らなかったのだが、1990年の制作ですね。阿刀田高の短編小説のドラマ化としては成功の部類。
■脚本:佐伯俊道、監督:猪崎宣昭で、檀ふみ、竹内力、山田吾一、菅貫太郎らが共演。当時の独特の全体に白っぽいハレーション気味のビデオ撮影の映像で、まるで檀ふみのイメージビデオみたいなタッチ。そうそう、当時のビデオ撮影のドラマはこんなルックだったよなあと懐かしい。
■お話は、あの有名なあれですよ。毎日、他人の葬式に出席してお棺の中に贈り物を収める謎の美女をめぐる疑惑…ってやつで、傑作短編ですね。謎めいた喪服の女のビジュアルがいかにもドラマ化に向きそうな原作ですが、ほんとにドラマ化されていたとはつい先日まで知らなかった。
■檀ふみは当時30代半ばというところで、イメージにはピッタリ。彼女に付きまとう片思いの若い優男が竹内力。頻発する香典泥棒を追ううちに謎の美女に疑惑を抱くのが山田吾一演じる刑事で、最終的に決定的な情報をもたらす市役所の男が菅貫太郎!1シーンのみ登場でも存在感が抜群です。
■もちろん血なまぐさい残酷な事件が起こっているわけですが、事件の背景や経緯はあくまで視聴者の想像に任せ、イメージビデオ的な映像で仄めかしにとどめている脚本がうまい。阿刀田原作の独特な作風を生かしたドラマで佳作といえるだろう。
参考
これが原作小説の収録された短編集ですね。阿刀田高の初期の傑作短編集なので、間違いなく面白いですよ。ただ、今読むとあまりに昭和テイストで若い人には違和感もあるかもね。