■阿刀田高の「恐怖同盟に」収録された「疣」が原作の1989年製作作品。関西テレビの『現代神秘サスペンス』枠で放映された。本放送を観ている気もするし、観ていないかもしれないし、すべては霞の世界に溶け込んでいる。なにしろ30年前のテレビドラマですよ。
■脚本:小森名津、音学:岩間南平、監督:井上昭で東宝の制作。コピー機メーカーの技術職から営業に異動となり悩む主人公は乗り過ごした最終電車を降りると、宿の客引きに誘われるまま、不思議な洋館風の宿に投宿するが、不思議な女が部屋に忍んで裸で寝床に滑り込む。しかも同じ姿かたちの女が二人いるようで、双子かと聞いても応えない...
■古尾谷雅人、中田喜子、芦川よしみ、三条美紀、山本亘、佐原健二というなかなか豪華な一作で、舞台となる洋館風の宿をセットで作っているから大したものだ。いかにも阿刀田高らしい昭和風のエロティックで幻想的な小品。中田喜子が夜の生活に欲求不満な人妻を演じて、もちろんヌードはないけれど、肩から上をさらしたカットだけでも、みょうに柔らかそうで、十分にやらしいので満足です。中田喜子がこんな単純な脇役を演じることも珍しいので貴重かもしれない。芦川よしみよりも中田喜子のほうがどう見ても色っぽいと思うのだがなあ。浮気する必要ないよねえ。
■『もうひとつの世界』というタイトルはあまりにも大仰だけど、現実逃避の果てにもうひとりの自分と入れ替わってしまう魔訶不思議なお話。あまり新味のないお話だけど、原作では阿刀田先生のお馴染みの話術ですらすらとその気(?)にさせられるわけ。このドラマも意外と力作なので、今となっては貴重な作品という気がするなあ。
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