不思議サスペンス『知らない旅』

■1991年に放映された関西テレビの不思議サスペンスの一編。原作は阿刀田高で、『冷蔵庫より愛をこめて』に収録された同名短編と思われる。確実に読んでいるはずだが、ほとんど覚えていないぞ。脚本:水谷龍二、音楽:岩間南平、監督:日高武治という布陣。

■強く何かを望んだときに分身が現れる経験をしたという妻(増田恵子)の話を聞いた夫(三浦洋一)は愛人(一色彩子)とホテルで密会すると、廊下やラウンジで妻に似た人影を見かけてゾッとするが。。。というお話で、実は第二幕までがかなりよくできている。

■深夜のホテルを舞台としてサスペンスと恐怖を味わう男の心理描写がなかなかよく描けていて、ちゃんと定石通りに怖い映像になっている。ことに大久保鷹が演じるバーテンダーのちょっと浮いた存在感が抜群にうまくて舌を巻く。状況劇場唐十郎と組んで伝説の怪優と呼ばれただけのことはある。幻想なのか現実なのか、妻の影におびえる男は、実はホテルの一室でもう一つの怪異を経験することになる。

■浴室から水音がするだけで怖いという恐怖演出の冴え。薄暗い部屋に一色彩子の白い腕がすっと現れるだけで怪奇な情景を作る演出も秀逸。日高武治といえば『円盤戦争バンキッド』しか思い浮かばないのだけど、変に上手い人だなあ。そういえば本作も東宝の制作で本間英行がプロデュ―サーなのだ。

■ただ、第三幕は完全に蛇足に見えてしまうので、終わり良ければ全てよしといかないのが残念。非常に惜しいなあ。



参考

『冷蔵庫より愛をこめて』は阿刀田先生の初期の傑作短編集です。今読むと昭和テイストの物珍しさ(?)も付加されて、感興も増すことでしょう。さすがに大昔に読んだきりなので、大方忘れてる気がするが…

今読むなら、これで阿刀田高の主要傑作群をほぼ網羅できるじゃないか。凄いな。携帯に便利なkindle版。紙がいい、紙が!バラで買うなら、こちら。

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