一歩前へ!ポストコロナの夜明けを予見するホラーコメディの快作『貞子DX』

基本情報

貞子DX ★★★
2022 ヴィスタサイズ 99分 @イオンシネマ京都桂川
脚本:高橋悠也 撮影:葛西誉仁 照明:鈴木康介 美術:高橋達也 音楽:遠藤浩二 VFXスーパーバイザー:朝倉怜 監督:木村ひさし

感想

■20年前に流行した呪いのビデオが再び流出、こんどの呪いは、24時間後に死ぬバージョンアップ版だ。タレント霊能者に呪いなんて無いと啖呵を切ったIQ200 の天才女子大生は探究を開始するが、妹がビデオを観てしまい。。

■というお話で、監督が木村ひさしなので真性ホラーにはなるわけがなく、露骨に『TRICK』とかのタッチで、脱力ホラーコメディと呼ぶのが相応しい。くどいほどのギャグが基本的に昭和テイストなのも、監督の趣味だろう。しかもあまり笑えないので、どんどん脱力してゆく。恐怖演出はJホラーメソッドなど、どこ吹く風の独自路線。というか、バラエティ番組のパロディドラマに近い。

■しかも映像のルックが異様に貧乏くさく、実際低予算映画なのだが、それにしても今どきのリッチなデジタル映画ではない。色調も(敢えて?)くすんでいるし、照明効果も冴えない。基本的にコメディなんだから、もっと開き直ってきれいな色調で通せばいいのだ。せっかく小芝風花が主演なのだから。そういえば『”それ”がいる森』の撮影も相当に貧しかったけど、日本映画の技術部って最近こんな感じなのかなあ。アマプラの『仮面ライダー BLACK SUN』の撮影は秀逸だったから、やっぱり予算規模かなあ。

■では退屈なのかといえば、これがなかなか見どころのある映画で、終盤の謎解きによって、未知の領域に踏み込む。そして観終わるとなぜかしみじみするから侮れない。小芝風花の母親が西田尚美なのも納得の展開。ポストコロナの世界に恐る恐る一歩前足を踏み出そうとする、今ここにあるリアルな世界観がゆるいホラーコメディとして提示される。こんな芸当はアメリカのB級映画じゃ当たり前の作劇だけど、邦画ではなかなか成立しない高等テクニックだよ。感服した。

参考

▶木村ひさしの映画は初見なのだが、以下のドラマ『あまんじゃく』が秀逸だった。これもオフビートなおっさんギャグと昭和テイストが珍味だった。
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
▶貞子さんは働きもの。というか、映画資本に搾取されている?
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp

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