■酔った勢いでキスした同僚のOLが毎日職場の引き出しに花束を入れてくるんだ。気持ち悪いから止めてくれと友人から忠告してもらったら、今度は自宅に届くようになったぜ。さすがに頭にきて直接本人に、キスなんてただのはずみじゃないかって言ってやったら、持ってきた黒ユリがみな枯れるときに、俺が死ぬってぬかしやがる。狂ってる。でも同期の社員が同じように交通事故で死んでいるのは事実だった。あの女何者なのか。俺は本当に死なねばならんのか?
■石井輝男が結城昌治の有名短編を1986年にドラマ化した傑作。台詞を削って、毎日違った花束が届けられる映像の積み重ねでサスペンスを醸成するのはさすがに大した技巧だし、自信なんだけど、随分久しぶりに見直すと終幕がそれほどでもないような気がしてきたぞ。
■田中好子に不吉な予言を投げかけられ、大型ダンプに轢かれそうになって助かり、おれは勝ったぞ、勝ったんだと田中健が叫ぶところまではいいとして、最終的に精神的に追い詰められてアパートでスーちゃんの幻覚(謎のコスプレとダンス!)を見ながら狂い死にというラストは今一つ説得力がないなあ。田中好子は一種の魔女であるという解釈なんだろうけど、死に方にもう一ひねり欲しかった。純粋に映像によるサスペンス演出は群を抜いているだけに、惜しいなあ。しかも、当時流行りだしたモダンホラーの都会的なタッチを意識的に(?)取り込んでいるのも貴重だし。