『ミステリー・ゾーン(トワイライト・ゾーン)』大好き!不完全備忘録(S1)14/36話

 

#1「そこには誰もいなかった」Where Is Everybody?

■脚本:ロッド・サーリング 監督:ロバート・スティーブンス

■気がつくと誰もいない街に迷いでて、人影を探してさまよう男の姿を描いた、パイロット版。人気が無いのに、誰かに見られている気がする。。。

■まあオチはそんなもんでしょうというところだけど、記念すべき第一作。トワイライトな異世界は、無人の世界で始まった。

#2「死神につかれた男」One for the Angels

■脚本:ロッド・サーリング 監督:ロバート・パリッシュ

■死神に迎えにこられた露天商は、なんとか言い繕って延命をとりつけるが、近所の少女が交通事故にあうと、死神は代わりに彼女を連れてゆくと言い出す。露天商は必死の口上で死神を手玉に取り、時間切れを誘おうとするが。。。

■素直に良い話で、ロッド・サーリングの「良い話」路線。死神の裏を書く趣向は、まさに落語のようでもある。明らかにベルイマンの『第七の封印』の影響下にあって、あれを見て発想したに違いないと思う。

#5「過去を求めて」Walking Distance

■脚本:ロッド・サーリング 監督:ロバート・スティーブンス

■社会的に成功し多忙な男は、たまたま故郷の街に立ち寄るが、そこは25年前のままで、死んだ父母も健在だった。。。

■これは明らかに丁寧に撮られた作品で、ロケ撮影も入念だし、なにしろ音楽をバーナード・ハーマンが全曲描き下ろしたらしい。(だから個別にクレジットされている。)基本的にはストック用の音楽を書いていたけど、本作は専用に作曲されたそう。実際、繊細でノスタルジックな音楽は出色で、リマスターされた弦楽器の旋律が単純に美しい。なんとブルーレイでは音楽専用のトラックが収録されていて、浸ることができる。

■そんなに捻りがあるエピソードではないけど、演出も演技も丁寧なので、結構心にしみる。本国でも好評だったらしく、マーク・ローレンスの『リライフ』でも参照された。
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#16「ヒッチハイカー」The Hitch-Hiker

■脚本:ロッド・サーリング(原作: ルシール・フレッチャー) 監督:アルビン・ガンツァー

■新しい就職のために東部からカリフォルニアに車を飛ばす娘は、道すがらに、同じヒッチハイカーを何度も目撃するが、周囲の人には見えないという。。。

■さすがにネタは割れてしまうので、いまとなっては意外性は減退しているけど、積極的にサスペンスを盛っていく演出姿勢は好印象。 ハーク・ハーヴェイの『恐怖の足跡』が、まさに本作を下敷きにしているだろう。ヒロインのモノローグで展開してゆくのもいい雰囲気。

#17「熱病」The Fever

■脚本:ロッド・サーリング 監督:ロバート・フローリー

■カジノでスロットマシンに徹夜でのめり込んだ初老の男が、スロットマシンに呼ばれる幻覚を見るが。。。

■非常に単純な発想による、単純なドラマだけど、主人公の焦燥感がちゃんと演技によって表出されるので、引き込まれてしまう。

■終盤に、スロットマシンがホテルの部屋まで攻めてくる(という幻覚をみる)ところまで、ストレートに表現するのは良いよね。楽しくて。しかも、スロットマシンが「フ・ラ・ン・ク・リ・ン…」と呼ぶ、ノイズっぽい音響効果が秀逸で、妙にリアリティを感じさせる。

#18「白い雲の果て」 The Last Flight

■脚本:リチャード・マシスン 監督:ウィリアム・クラクストン

■現代(1959年)のアメリカ空軍基地に複葉機で英国軍人が降り立つ。彼は1917年の第一次世界大戦の時代からやってきたというが。。。

■ついにリチャード・マシスンが脚本を書いた一作。タイムスリップもので、さすがに構築のしっかりした作品だけど、まあ、都合よく主人公は時代をゆきつ戻りつするわけ。でも、語り口が秀逸なので、過不足がないのだ。まさに「奇妙な味」の好短編。

■なんとなく『世にも不思議な物語』の雰囲気に似ている気もするけど。テーマ性やメッセージ性よりも、なぜか知らんけど不思議なことが起こりました、というそれだけを切り取って描くところが、通底するし、大好き。

#19「死相」The Purple Testament

■脚本:ロッド・サーリング 監督:リチャード・L・ベア

■第二次大戦中のフィリピン戦線、仲間の兵士たちの死を予言した兵士がいた。兵士の顔に不思議な光が指し、死相が現れるというのだが。。。

■というお話で、理解ある上官のディック・ヨークまで予言通りに前線で死亡するとなると、オチは当然予想通りなんだけど、そこは間接描写になるので、かえってニュアンスを生じるよね。

■戦記物になると撮影のルックも、いつもの明朗なハイキーのタッチではなく、コントラストが強めで硬いタッチになる。ちゃんと使い分けてますね。

#20「平和の園」Elegy

■脚本:チャールズ・ボーモント 監督:ダグラス・ヘイズ

■遠い未来、宇宙船が到着した星は、200年くらい前の地球の姿に似ていた。だが、街も人間も時間が凍りついたように静止して動かなかった。。。

第三次世界大戦で世界が崩壊した後、再建された未来世界から宇宙に飛び立った飛行士がたどり着いたのは、まさにトワイライトな時空だった。

■最大の見所は、過去の幸福だった時代のアメリカの町並みや多くの民衆といった光景が、完全に静止した時空間として存在し、宇宙飛行士がその間を回遊する場面のセンス・オブ・ワンダーに尽きる。一応、種明かしとして後半に説明が入るのだが、種明かしの面白さよりも、映像表現の面白さが凌駕している。そこはまさに、SF。

■のちに『アウターリミッツ』でも同様の映像効果を狙ったエピソードが2作、作られて、そちらも傑作だったけど。というか、お話としては後出し組のほうが上出来なんだけど、人海戦術の面白さはこちらがウワテ。撮影の舞台裏を想像するだけでワクワクする。

#21「めぐりあい」Mirror Image<傑作>

■脚本:ロッド・サーリング 監督:ジョン・ブラーム

■深夜バスの待合で、自分がもうひとりいるような幻覚に襲われた娘を、偶然居合わせた男が親切に介抱するが。。。

■これは完全にはじめて観たし、聞いたこともないお話だし、演出も丁寧だし、合成カットが凄いし、間違いなく傑作でしょう。ラストあたりの意表を突く凄い合成カットは、『ウルトラQ』のケムール人の走りに影響を与えたのではないか。多分、そうだよね。

■落とし噺としては破格だと思うけど、完全に心理的な不条理劇として作られている。脚本の発想も凄くて、「奇妙な味」の短編はたくさん読んだけど、似たような話を思い出せない。『世にも不思議な物語』にあってもおかしくない。というか、完全にそっち系の怪奇実話?

#22「疑惑」The Monsters Are Due on Maple Street

■郊外の住宅地で、いっせいに電気が消え、内燃機関も動かなくなる。誰かが宇宙人の仕業と言い出す。誰が手先なのかと疑心暗鬼の中で、ある家だけに電気が灯ると、あいつが怪しいと、住民たちが詰めかけて吊し上げがはじまる。。。

■極限状況下での疑心暗鬼と猜疑心がいかに人間社会を蝕み、崩壊に導くかを描いたシリアスな寓話。まあ、ロッド・サーリングがラストのナレーションでテーマを全部言っちゃうのだけど、そのテーマ性じたいは今も古びていない。義務教育で子どもに見せたほうが良いと思う。

#32「トランペットに憑かれた男」A Passage for Trumpet

■脚本:ロッド・サーリング 監督:ドン・メドフォード

■酒で身を持ち崩したトランペット奏者は、楽器を質に入れて酔って交通事故にあうと、周囲の人間から見えない人間になっていた。。。

■現実世界と似ているけど少し違う違和感ある世界=トワイラゾーンに落ち込んだ人間を描く、王道の物語だけど、お話とともに技術的にかなり凝った作品で、見どころが多い。オチは弱いと思うけど、映像表現としては傑作の部類。その違和感のある世界は、「煉獄」ではなく「辺獄」と呼ばれる。

■夜の世界をテーマとするのでハイコントラストなモノクロ撮影で、表現主義的な陰影の表現にもかなり凝っているし、主人公が鏡に映らないという表現を大掛かりなセットで、アナログに表現したシーンは出色。鏡に見立てたガラスを中心に左右対称なセットを作っている。演者は双子か、容姿の良く似た役者を揃えたようだ。ハリウッド職人の凄い意欲的な仕事で、感心しました。

#34「マネキン」The After Hours<傑作>

■脚本:ロッド・サーリング 監督:ダグラス・ヘイズ

■デパートに指ぬきを買いに来た娘は、がらんとした9階に案内される。あとで商品に傷があったのでクレームを申し出ると、うちに9階は存在しないと言われる。。。

■シーズン1はかなり予算が潤沢だったらしく、デパートもフルセット。撮影も流麗でさすがに贅沢。撮影はジョージ・クレメンス。サスペンスと怪奇味も盛り込みながら、お話自体はファンタジーで、実に贅沢な短編。子どものときに観ると、確かにおねしょする奴ですね。『悪魔くん』の「首人形」ほど凶悪ではないけど。

■しかし、ロッド・サーリングは若い娘に何か恨みでもあるのか?

#35「鉄腕ケーシー」The Mighty Casey

■脚本:ロッド・サーリング ■監督:アルビン・ガンツァー、ロバート・パリッシュ

■あるメジャーリーグチームに科学者が連れてきた鉄腕投手は、実はロボットだった。鼓動(ハート)がなくて人間じゃないから野球規約違反だと指摘されると。。。

■ロボットに科学者が追加の改造処置を施すと人間らしさを示すようになるが、それが仇になって、野球界から去ってしまうというお話。後日談がその後のナレーションに引き継がれて、洒落たダメ押しとなっている。

#36「すべては彼の意のままに」A World of His Own

■脚本:リチャード・マシスン 監督:ラルフ・ネルソン

■劇作家の妻は、夫が他の女と家でいちゃついているのを見かけると、夫を問い詰めるが、女の姿は煙のように消えていた。ついに夫は、あの女は自分が書いたキャラクターだと言い出す。。。

リチャード・マシスンは、最初はもっとシリアスな内容で考えたけど、コメディに書き直したそう。オチは予想通りだけど、ロッド・サーリングまで消されてしまうのが愉快。猜疑心の強い、妙にファッショナブルな妻を演じるフィリス・カークという女優の大仰なコメディ演技がなかなか秀逸で、演技合戦がなかなかリッチで楽しい。

■劇作家が口述筆記すると、そのままのことが起こるなんて、まさにトワイライトな時空ならでは。そんな能力があるなら、もっと凄いことに使えばいいのにね!

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