赤ひげ ★★★★

赤ひげ
1965 スコープサイズ 185分
NHKBS
原作■山本周五郎 脚本■井手雅人小国英雄黒澤明菊島隆三
撮影■斎藤孝雄、中井朝一 美術■村木与四郎
照明■森弘充 音楽■佐藤勝
監督■黒澤明

■忘れていたけど、立派な3時間映画。約2時間経過時に休憩が入る。『天国と地獄』は何が言いたいのかちっとも焦点が定まらない作劇だったが、本作はバカでも分かるように懇切丁寧に赤ひげ先生が全部台詞で説明してくれます。赤ひげ先生は単なる説明役での登場で、本来なら損な役回りだけど、これが実に立派な大人に見えるのが絶頂期の三船マジック。

■実質的な主役は加山雄三で、これが本作の魅力の大半といってもいい。演技的にはところどころ未熟なところが残るが、育ちのいい若者らしさを嫌味なく表現できるのは貴重な資質だ。山崎努のエピソードが終わって、女郎屋で下働きさせられている二木てるみを拾ってくるまでが前半だが、山崎努のエピソードは正直いまひとつと感じる。長屋の裏の崖が崩れて骸骨が現れるといったあたりが何度見ても空間表現としてしっくり来ない。

■それに比べて後半1時間のパートは二木てるみ頭師佳孝といった新人から圧倒的な演技を引き出す黒澤明の名伯楽ぶりが凄いし、杉村春子の頭を大根で殴打するというとことん通俗な見せ場も大成功だし、やはり面白い。賄いのおばさん連中の大活躍も頼もしいし、なんといってお三戸部スエだよね、三戸部スエ。

■板戸の木目をいやらしいほどギラギラ浮き上がらせ、加山雄三の髪の油もギトギト反射させる照明効果はいかにも黒澤明好みの脂っこさで、大映京都のルックとは似て異なる。30年近く前に大スクリーンで観たときはさすがにやり過ぎ感を感じたが、とにかく手間と金がかかっているので、もうありがたく堪能させていただきますよ。それにしても『天国と地獄』の画づくりと比べると、その深化が著しいので驚くよ。


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