蜘蛛巣城
1957 スタンダードサイズ 110分
DVD
原作■ウィリアム・シェイクスピア 脚本■菊島隆三、小国英雄、橋本忍、黒澤明
撮影■中井朝一 美術■村木与四郎
照明■岸田九一郎 音楽■佐藤勝
監督■黒澤明
■御殿場の荒れ地に巨大な城が現出するという黒澤映画名物の舞台設定の、はじまりはじまりの一作。蜘蛛巣城の巨大なセットは確かに呆気にとられるけど、映画としてはかなり厳しい仕上がり。クライマックスの三船敏郎の最期は黒澤明以外に真似すらできない強引で非情な演出によって傑出した見せ場にはなっているが、全体に三船敏郎の演技は一本調子で、心理的な起伏に乏しく、面白みがない。物の怪の演出にしても黒澤明は怪奇演出にあまり適性がないらしく、もったいない出来。浪花千栄子の無駄遣いだし、この役は毛利菊枝のほうがいいよね。
■蜘蛛巣城のロケには御殿場だけではなく、例によって広大な農場オープンもふんだんに使用されているようだが、正直いって『隠し砦の三悪人』のほうが出来がいい。秋月城の焼け跡は無駄に巨大なセットが実に贅沢な味になっていたが、本作の蜘蛛巣城は美術的にも演出的にもコクがなく、平板。
■封切り当時から黒澤映画は台詞が聞き取れないという不満が多かったのだが、本作も例外ではなく、おそらく当時の同時録音の限界のせいか、何割かは聞き取れない。でも今の時代、ソフトだと日本語字幕を表示しながら観られるからいいよね。