疑惑 ★★★☆

疑惑
1982 ヴィスタサイズ 127分
DVD
原作・脚色■松本清張 脚本■古田求野村芳太郎
撮影■川又昂 照明■小林松太郎
美術■森田郷平 音楽■芥川也寸志 毛利蔵人
監督■野村芳太郎

■別府で起きた3億円保険金殺人事件をモデルにした法廷サスペンス映画。テレビで部分的に観た記憶があるが、ちゃんと観たのは初めて。

■サスペンスとかミステリーというよりも、桃井かおり演じる容疑者と岩下志麻演じる弁護士の演技合戦で見せる、一種の心理ドラマといえるだろう。まあ、こんな映画は、この時代の野村芳太郎でなければ撮れないだろう。桃井かおりの怪物じみた怪演は、今見ても凄い。最後まで怪物として描ききればもっと凄かったのだろうが。

■法廷シーンの面白さは、傑作「事件」で憶えたコツを再現してみせ、無類の痛快さだ。山田五十鈴三木のり平小沢栄太郎といった芸達者を揃えて、それぞれの芸で笑わせる。現在の日本映画では不可能な芸当だ。

■マスコミの勇み足、思い込みによる冤罪、報道被害という後半のまとめ方も古びていないし、今見ると余計にリアルで怖い。被害者の息子を証人に呼んで、サディスティックに責め上げてゆく岩下志麻の怖さも特筆もの。「極道の妻たち」はこの4年後に始まるのだ。


© 1998-2024 まり☆こうじ