油断大敵 ★★★☆

油断大敵 [DVD]
油断大敵
2004 ヴィスタサイズ 110分
DVD
原作■飯塚訓 脚本■小松與志子、真辺克彦
撮影■長沼六男 照明■吉角荘介
美術■中澤克巳 音楽■ショーロ・クラブ
監督■成島出

■一言でジャンルを説明することができないところに、せっかくの佳作ながら、あまり広く観られない原因があるだろう。実に映画らしい映画で、役者の演技を堪能できるし、役者の演じるキャラクターの人間性が入念に描きこまれており、よく練られた脚本である。役所広司柄本明だけでもお腹一杯だが、脇役も夏川結衣菅野莉央、淡路景子といった実力派が揃っている。特に夏川結衣は熱演で、前半で消えてしまうのが惜しいほど。

■交番勤務から泥棒刑事になりたての主人公(役所)は、逮捕した大ベテランの泥棒(柄本)に見込まれて、泥棒の手口を教授される。10年後、一人前の泥棒刑事に成長した主人公は刑期を終えた泥棒と再びまみえる事に・・・

■冒頭で述べたようにジャンル分けが難しい作品だが、人情ドラマと考えるのが一番相応しいのかもしれない。主人公の刑事の母親を欠いた家庭の親子のドラマと刑事と泥棒の奇妙な交流のドラマが並行して綴られてゆく。ビール瓶を不恰好に吹き鳴らす役所とビールに酔ったのを口実に男やもめの彼に擦り寄る夏川のラブシーンなど、実によく出来ているし、ラスト近くの役所が柄本を口説き落とす長台詞の芝居の見せ場なども、非常によく練られている。

■監督の成島出はとある事件のためリメイク版「日本沈没」の脚本のクレジットを削られてしまったあの人であり、作風としては、スペクタクルとかSFとは全く縁の無さそうな、あまり映像にはこだわりの無い古いタイプの演出家のようだが、じっくりとお話と芝居を見せてゆく姿勢は正統派の貫禄だ。最近は「ミッドナイト・イーグル」などという不似合いな大作アクション映画を演出しているが、あまり似合わない企画を引き受けるべきではないだろう。さて、「フライ、ダディ、フライ」はどうなのだろうか。

■製作はケングルーヴ、カルチュア・パブリッシャーズほか。

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