仮面ライダー THE NEXT ★★☆

仮面ライダー THE NEXT
2007 ヴィスタサイズ 103分 @DVD
脚本■井上敏樹
撮影■田中一成 照明■三重野聖一郎
美術■和田洋 VFXスーパーバイザー■小林真吾
音楽■安川午朗 操演■根岸泉 アクション監督■横山誠
監督■田崎竜太

■これ非常に惜しい作品。仮面ライダーだけど、テレビ的じゃない映画的な演出を試みていて、かなりいいところまで行っている。技術スタッフもテレビの東映東京撮影所おなじみスタッフではなく、映像作りもどちらかといえばVシネマ的なタッチを狙っている。しかも、本作はヒーローアクションとJホラーの融合という意欲作でもある。

■ところが、結果的には、両者が水と油のように分離して、試みは失敗に終わっている。田崎竜太は見どころのあるアクション映画の作り手なのだが、今回はJホラーテイストに力を注ぎ過ぎたようだ。実際、Jホラー表現の尺が長すぎて、肝心のアクションに至る筋道がきちんと描かれていないのだ。そして、それが劇映画としては致命傷になった。

■呪われたアイドルの呪怨の真相がショッカーの陰謀ときちんとドラマ的に結びついてくれれば、クライマックスのアクションも映えるのだが、お岩さん化したアイドルが、ショッカーの放ったナノマシンの影響でさらにバケモノ化するというエピソードの説明シーンが何故かオミットされているから、ドラマが崩壊しているのだが、推察するに、脚本には書かれていた部分が尺の関係でカットされたのだろう。普通、脚本家はその程度の辻褄の部分はちゃんと書き込むはずなので、自殺したアイドルがショッカーに回収され、しかしナノマシンの暴走で改造人間にすらなれず、失敗作のバケモノとして地下に廃棄されるという鬼のようなエピソードが存在したはずなのだ。そして、そのエピソードこそ終盤のアクションの起爆剤となるはずなのだ。

■以上の描写が何故か完全にオミットされたおかげで、終盤の理屈が全く理解できず、クライマックスの風見志郎と妹のメロドラマも生きてこない。原口智生のコーディネートした「ザ・フライ2」もかくやというバケモノが終盤でCGによる中途半端に幻想的な触手を伸ばすのもいただけない。徹底的にグロテスクに描ききるべきだったのだ。前作も井上敏樹の意欲が演出的に十分に展開されなかった憾みがあったが、本作も非常に惜しいところで伸び悩んだ。さらなる欠点の一つは、安川午朗の安っぽい劇伴なのだが。

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