暴れ豪右衛門 ★★★

暴れ豪右衛門
1966 スコープサイズ 100分
BS2録画
脚本■井手雅人、稲垣 浩
撮影■山田一夫 照明■大野晨一
美術■植田 寛 合成■三瓶一信 音楽■石井 歓
監督■稲垣 浩


 戦国時代、加賀七党の党首として侍たちに対抗して百姓達の村を自衛する土豪の首領豪右衛門(三船敏郎)のもとに、円城寺に人質に出していた弟が帰ってくる。一方、朝倉(平田昭彦)は家来(西村晃)の進言により、加賀七党を円城寺攻めの尖兵として利用すべく豪右衛門の弟(田村亮)を篭絡して、共に戦わせようと謀る。弟は命を落とし、留守の村は卑怯にも焼き討ちにあう・・・

 60年代の東宝田中友幸が敷いた「世界の三船が大暴れ!」路線の一作で、稲垣浩としてはお付き合い程度の作品ではないかと推測される。実際、三船敏郎の演技は一本調子であまり褒められたものではない。

 城攻めのオープンセット(多分、御殿場)、騎馬戦(これも、御殿場?)、村のオープンセットとやたらと大掛かりで、黒澤明の「影武者」と同等以上のスケール感が何気なく実現しているところがこの時期の東宝の凄いところだが、劇的な狙い目が大きな画の中で希薄になりがちで、どうしても冗長な印象が残ってしまうのが、この時期の稲垣浩の不幸なところだ。

 侍に対抗する土豪の群れという着眼点は面白いのだが、百姓と土豪というものの違いの内容が判然としないのは残念。アクションの中にそういう興味を掘り下げればユニークな時代劇になっただろう。

 しかし、平田昭彦西村晃という珍しい組み合わせの侍方はちょっと面白いし、侍と土豪の間を往還する加東大介が設け役でラストのアクション映画的な痛快さによく貢献している。

 特に優れた映画ではないが、十分に水準作。60年代に井手雅人稲垣浩と組んでいたというのが意外だった。井手雅人といえば野村芳太郎と組んだ映画のエグさが印象に強いのだが、大東宝で巨匠を支えていたのだ。この路線が後に黒澤明の映画に参加する布石となったのだろう。 

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