『幕末残酷物語』

幕末残酷物語
1964/CS
(2004/12/11 レンタルDVD)
脚本/国弘威雄
撮影/鈴木重平 照明/井上善一
美術/富田治郎 音楽/林 光
監督/加藤 泰

感想(旧HPより転載)

 新選組に憧れて入隊した郷士の主人公(大川橋蔵)だが、新入隊士が目にしたものは幹部の命令一過暗殺集団として京洛を震撼させ、内部では鉄の規律で血の粛清を繰り返す非情の集団の姿だった。自ら首切り役を買って出て近藤勇(中村竹弥)の信用を買っていくが、恋人(藤純子)への情も思い切れずにいた。新撰組の中にあって自分と同じ心性を感じ取っていた沖田(河原崎長一郎)から芹沢鴨暗殺の真相を教えられたとき、彼の中で何かが動き出していた・・・

 加藤泰新撰組の”残酷”な内幕を苛烈で赤裸々な筆致で描き出してゆく残酷時代劇シリーズの一編であるが、そうした血みどろの粛清劇よりも、大部屋俳優たちが演じる隊士たちの生活感と猥雑な熱気溢れる描写に独特の演出姿勢が顕著に表れている。

 クライマックスで主人公の意外な正体が明かされて時代劇らしい作劇に収束していくが、筋立てには少々無理があるようだ。西村晃の土方、内田良平の山崎という希にみる凶悪な新撰組の構成が見所で、35歳で死んだはずの近藤勇が中村竹弥というのも、いかにも昔の時代劇らしい豪快な配役である。しかも、この中村竹弥の近藤の顔の怖いこと。この映画での新撰組は恐怖の館なのである。

 そのなかで点描される大川橋蔵藤純子の交流が加藤泰らしいカッティングで清冽な叙情を閃かせている。実際、藤純子の演技の確かさは大川橋蔵を食ってしまっている。

 NHKの「新選組!」と併せて観るといっそう興味深い。この時代の役者陣の濃度の濃さは時代の空気の濃厚さに比例しているのかもしれない。

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