『ゴジラ(1984)』

ゴジラ
1984/VV
(2004/11/28 BS2録画)
原案/田中友幸 脚本/永原秀一
撮影/原 一民 照明/小島真二
美術/櫻木 晶 音楽/小六礼次郎
特技監督中野昭慶 監督/橋本幸治

感想(旧HPより転載)

 米ソ冷戦下に出現したゴジラの脅威により、実験をかねて東京で核兵器を使用することを主張する米ソ両首脳をホットラインで説得する首相(小林桂樹)を描く部分がこの映画の核心なのだろうと、改めて何年ぶりかで観て痛感した。

 これはもちろんプロデューサー兼原案担当の田中友幸の描きたかった部分の核心のことである。そういう意味で、これはゴジラ映画であると同時に「日本沈没」「ノストラダムスの大予言」の首相、あるいは「人間革命」の宗教家にも通底する、”演説”を通じて理想のリーダーの姿を描き出すという田中友幸の執念のモチーフの系譜に属する映画に違いない。それはおそらく自身は言葉少ない性格だったという田中友幸の若き時代の学生演劇の経験や、長じて東宝映画の社長となってからの政財界との交流の中ではぐくまれたものだったのだろう。

 これ以降、健康上の理由もあり映画制作の実作業を富山省吾に譲ることで、平成のゴジラ映画は確実に生まれ変ることになるのだが、やはり84年の「ゴジラ」は田中友幸の生み出してきた映画の集大成であったことに気づかされるのだ。

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