新選組血風録 近藤勇 ★★★

新選組血風録 近藤勇
新選組血風録 近藤勇
1963 スコープサイズ 94分
アマプラ
原作■司馬遼太郎 脚本■笠原和夫加藤泰
撮影■伊藤武夫 美術■大門恒夫
照明■田中憲次 音楽■斉藤一
監督■小沢茂弘

近藤勇が市川右太右衛門、土方がなぜか加藤武、準主役の篠原泰之進木村功、他に佐藤慶も登場するという謎の多い新選組映画。脚本は笠原和夫加藤泰だし、成立過程に何かあったに違いない。伊東甲子太郎に誘われて新選組を勤王に塗り替えるために入隊したものの元来信念のない篠原が近藤勇の東国武士としての不器用な生き方に感化されてゆく様子が描かれる。

■さすがにHDマスターらしく、ピカピカのモノクロ映像が嬉しいし、伊東甲子太郎暗殺の場面なども秀逸で、新選組内部の政治闘争がハードに描かれる。ただ、市川右太右衛門と木村功の2ショットの違和感が最後まで拭えない。木村功が右太衛門に感化されるという映画的な嘘はなかなかハードルが高いと感じる。右太衛門でなく新劇系の役者を据えるか、木村功でなく東映時代劇の若手を据えれば、もう少し納得しやすくなるだろうなあ。

■しかし、東国武士は不器用すぎて都の人々からは蔑視されるし、時代の流れからは取り残されるし、当然行く先は滅亡しかない。その時代に取り残された、時代遅れの感じを配役で一目で分からせるというのがこの異様な配役の戦略だったのだろう。そう考えると、なかなか残酷な映画である。東映時代劇末期ならではの攻めた企画だったようだ。正統派東映時代劇に対する挽歌ということか。これでなんとなく腑に落ちたぞ。

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