シリーズ11作目『座頭市逆手斬り』

座頭市逆手斬り
1965/CS
(2004/8/3 レンタルDVD)
脚本/浅井昭三郎
撮影/今井ひろし 照明/伊藤貞一
美術/太田誠一 音楽/大森盛太郎
監督/森 一生

感想(旧HPより転載)

 森一生が「続・座頭市物語」以来の演出を担当するシリーズ第11作目で、大した話ではないのに不必要に入り組んだ脚本は、正直いって意図がよく分からない。

 藤山寛美が偽座頭市を演じて、アドリブ的な掛け合いの楽しさで魅せるのは、さすがに森一生らしい喜劇演出で、作為を配してカット割りも最小限に留めて、まるで舞台中継のようなライブ感を重視している。

 悪い親分荒磯の重兵衛を石山健二郎が演じているものの、それほどの見せ場が設定されているわけでもなく、ラストの浜辺での立ち回りもロケではなく、セットで再現した情景の質感に無理があり、座頭市の殺陣も冴えない。藤山寛美が石山健二郎の息子という設定もほとんど生かされないという作劇も、実に奇妙なのもである。

 一方で、座頭市がはじめて海と出遭う場面やラストの砂浜のフルショットに森一生らしい乾いた情感がたっぷりと込められており、森一生の映画としては独特の味わいはしっかりと含まれている異色作である。 

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