不意打ちのハードゴアスリラー!『見えない目撃者』

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出典:https://www.webcg.net/articles/-/41501

基本情報

見えない目撃者 ★★★★
2019 スコープサイズ 128分 @イオンシネマ京都桂川(SC11)
脚本:藤井清美、森淳一 撮影:高木風太 照明:藤井勇 音楽:大間々昴
美術:禪洲幸久 特殊メイク・特殊造形監修:江川悦子 VFXIMAGICA Lab. 監督:森淳一

見えない目撃者 (小学館文庫)

見えない目撃者 (小学館文庫)

感想

韓国映画『ブラインド』のリメイクなので、正直敢えて観に行くつもりもなかったのだが、なぜか観た人からオリジナルを超えたリメイクの成功作という感想が流れていたので気になって劇場で確認してきた。いや驚いた。ホントに凄かった。
■警察学校修了後に交通事故で盲目となった元女性警官が偶然遭遇した拉致事件を探るうち、その事件の真相が連続猟奇殺人事件であることをつきとめるという猟奇スリラー映画で、お話じたいは過去にいろいろと観た映画を想起させるし、そもそも韓国映画のお得意とするジャンルでもあるし、日本映画がどこまで韓国映画に迫れるのかと高をくくって観ていると、事態はどんどん不穏な空気に包まれて、どえらいゴアフィルムを見せられることに。。。
■映画の前半は昔の東映映画風にリアルな犯罪捜査をじっくりと描き、これによって地に足の着いた映画であることを納得させる。同時に家出して風俗に勤務していた娘が何者かに拉致された様子がカットバックされて、嫌な空気を積み重ねる。残酷描写でR15指定をくらった宣伝戦略が功を奏するうまいつくりで、まだ残虐なことは何も起きていないのに、ひたひたと嫌な結末を予見させる重い空気が積み重なってゆく。非常に巧妙な作りだ。
■そして終盤の手前で決定的なハードゴア場面が挿入される。たぶん本作の脚本を持って主演女優探しをした際に、全体的にはOKだし是非受けたいが、このあたりはカットしないのかと事務所から訝しがられたに違いない。でも監督はここがこの映画の感情的な胆なので、ストレートに描きますと返事したはずだ。そして幾人かの主演女優候補に逃げられたはず。そして残ったのが吉岡里帆というのは、個人的には痛快な感がある。吉岡里帆って、ルックスがのほほんとしたゆるふわ系の見栄えなので勘違いされそうだが、実はかなりがつがつした真正の芸能の民なのだ。ホントなら新劇俳優としてデビューしてもおかしくないくらいの玉なのだ。
■あまりにハードなゴア描写のために映画自体が嫌われてしまかねないし、地上波テレビでは放映できないだろうが、チャレンジしがいがあると踏んだ吉岡里帆の判断は正しかった。映画は、主演女優を引き立てるためにすべてが計算されている。猟奇殺人犯の問答無用の残虐行為を敢えてストレートに描くことで、観客の客観的な判断や倫理的な疑問の余地を粉砕して、ひたすら犯人への制裁感情を掻き立てるようにデザインされている。その観客への心理操作は、見事に成功している。そして、ラストに引き立つのは吉岡里帆の孤高の存在感なのだ。これ以上の女優への贈り物は、無い。
■全体的に非常にオーソドックスな猟奇スリラーで、80~90年代のハリウッド映画を彷彿とさせるのだが、そうした教科書的な展開をものの見事に成功させる森淳一監督の手腕には驚嘆した。決して派手なキャメラワークとか奇抜な編集とかではなく、今時地味なほどのカットを積み重ねでじわじわと見せる。それでも盲目の女性の耳で見た脳内の光景をVFXで映像化したアイディアは秀逸で、特に地下鉄の通路のシーンなど、感動的な名場面を生んでいる。いや、あのシーンは思い出すだけで、胸が熱くなってくるよなあ。ホントに感心した。冒頭の徐々に視力を失ってゆく場面のVFXも、個人的には嫌な感じMAXですがね。
韓国映画では実際に起こった猟奇犯罪を劇映画に仕立てて良作を何本も世に出しているが、そもそも日本映画は純粋なサスペンス映画が苦手で、ハリウッド映画や韓国映画には水をあけられていた。そこに本作が突如乱入して、純粋なサスペンス演出を見せる。もちろん座頭市シリーズなどで何度も映像化はされているが、そのうえでもよくぞここまで描き切ったという超絶なサスペンス演出が冴えまくる。いまどきここまで純度の高いサスペンス演出は『エスター』『アンノウン』『フライト・ゲーム』などのコレット=セラくらしか思い浮かばない。ラストの活劇の閃光もまさにコレット=セラを思わせる。
■リアルな社会風俗を地味に描いた前半からラストのサスペンスの舞台が豪壮な洋館に変転するのもコントラストが面白く、ちょっとブラムハウス映画に似てくる。ただ、暗闇の場面が妙に明るいのは残念だが。でもその後のサスペンスから活劇への反転の演出があまりに見事なので、もう何の文句も言いますまい。
■製作は東映、ROBOTほか、企画・製作はROBOT。

予告編

参考

韓国映画『ブラインド』はいいところもあったが、かなりとっ散らかった印象で求心力に乏しい。でもごった煮感こそが韓国映画の味わいかなあ。
maricozy.hatenablog.jp
コレット=セラのサスペンス活劇が好きな人はぜひ『見えない目撃者』を観ましょう。絶対ハマるよ。
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