シリーズ7作目『座頭市あばれ凧』

座頭市あばれ凧
1964/CS
(2004/7/24 レンタルDVD)
脚本/犬塚稔、浅井昭三郎
撮影/竹村康和 照明/加藤博也
美術/西岡善信 音楽/池野 成
監督/池広一夫

感想(旧HPより転載)

 鉄砲で狙われて九死に一生を得た座頭市は、命を救ってくれた女(久保菜穂子)の父親仏の文吉(香川良介)の一家に草鞋を脱ぐが、敵対する一家の吃安(遠藤辰雄)は川渡しの利権を狙って、女の弟を罠にかけて無理難題を吹きかける。さらに一計を案じて座頭市に草鞋を履かせた吃安は、sその隙に文吉一家に喧嘩を仕掛けて一家を皆殺しにする。それを知った座頭市は・・・

 シリーズ7作目で、池広一夫の監督作としては「千両首」に続いて2作目だが、単純な物語の中に座頭市の凶状持ちとしての孤独感や疎外感を滲ませた脚本は、シリーズ物ならではの面白さを発揮している。座頭市が自ら進んで悪人を斬るという趣向や、強力なライバルの不在という設定にも、シリーズの活性化の工夫が見て取れるし、ラストの花火の反映を浴びて地獄の鬼のようにも見える座頭市のアップで締めくくった叙情の思い切りの良さも、サイレント映画から活躍する犬塚稔ならではのものだろう。

 しかし、なんと言ってもこの映画の凄さは池広一夫のアクション演出の斬新さとケレン味によるところが大きく、クライマックスの吃安一家の大量殺戮の凄まじさはシリーズ中でも異色であり、同時に屈指の名シーンといえるのではないだろうか。特にろうそくの光を生かした光と影の演出は大映京都の持ち味を120%発揮した名シーンで、灯心の動きに沿って手持ちのライトを切り替えて光の移動を表現する場面など、もう惚れ惚れするほどの職人芸である。映画における光の演出がどれほど重要で効果的であるかということが、この1シーンを見れば、世界中の誰もが納得できるだろう。ワンマン・アーミーと化した座頭市の殺気が絶品な様式美で描き出される映画的高揚感はは、無形文化財に指定したいほどの完成度に達している。

 勝新の驚異的な瞬発力を1カットで見せる緩急自在な演出も圧倒的で、池広一夫という演出家の技量には計り知れないところがある。完璧な傑作「ひとり狼」は決してまぐれ当たりではないのだ。

 ちなみに、角川から発売されているDVDはオリジナルネガからローコントラストポジを起こしてテレシネ収録しているため、劇場でニュープリントで観る大映京都独特のコントラストと独特の照明設計がかなりフラットに改変されており、映像の質感自体がビデオ的に表現されているので、これだけを観て大映京都の映画の画調を判断するのは危険である。ディスプレイのコントラストや明るさを絞り込んで調整すれば、かなりオリジナルに近い画調を再現することはできるようだが、大映京都の陶然とするほどの様式美とフィルムの質感を確認するのに最善な方法は、劇場でニュープリント版を観ることだろう。

© 1998-2024 まり☆こうじ