『資金源強奪』

基本情報

資金源強奪
1975/STトリミング版
(2003/2/6 よみうりテレビ録画)
脚本/高田宏治
撮影/赤塚 滋 照明/中山治雄
美術/井川徳道 音楽/津島利章
監督/ふかさくきんじ

感想(旧HPより転載)

 何故かビデオにもならず、知る人ぞ知る幻の傑作とも呼ばれるこの映画に十数年ぶりに再会したのだが、果たして文句なしに犯罪映画の傑作である。

 暴力団の幹部を射殺して8年後に出所した主人公(北大路欣也)はム所仲間を誘って自分の所属する組の襲名披露花会に乱入し、3億円以上を強奪することに成功するが、組は現職の刑事(梅宮辰夫)を金で釣って犯人追跡を始める。自分以外の何者も信じようとしない主人公はかつての愛人(太地喜和子)すら利用して逃げ延びようとするが、刑事の追跡は確実に彼の身に迫っていた。

 これに匹敵するほど乾いた犯罪映画は岡本喜八石井輝男くらいしか思い当たらないほどハードボイルドに徹した脚本で、その中でいかにも日本的な脂ぎった悪役を熱演する名和宏とこれまた見るからに高温多湿な夜の女太地喜和子の腐れ縁が主人公に利用され切り捨てられる様は、まさに痛快の一語に尽きる。

 若い女房(未成年)にマンションをねだられて悪い気を起こすはぐれ刑事を演じる梅宮辰夫がまた絶品で、特に通天閣からの狙撃シーンは、間違いなく東映映画史上に残る名シーンだ。梅宮辰夫がこれほどまでにカッコ良いとは、まさに深作マジックと唸るしかない。

 何といってもこの映画の第一の功績は脚本の高田宏治にあるのだが、「キーハンター」とか「バーディー大作戦」のタッチでフットワーク軽く撮り上げた深作の演出と絶好調というべき津島利章の劇伴が相まって、東映的というよりも、西村潔的なアクション映画に仕上がっている。西村潔が火曜サスペンス枠で撮った「コンピュータの身代金」とか「モナリザの身代金」などの気障なテレフィーチャを多少東映的に泥臭くアレンジした感じといえば、想像がつくだろうか?

 また、誰しもが思わず唸るラストシーンの仕掛けなど、全く天晴れなもので、高田宏治畢生の傑作脚本といって間違いないだろう。

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