仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL

基本情報

仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL
2002/VV
(2002/8/31 京都MOVIX/SC2)
脚本/井上敏樹
撮影/松村文雄 照明/斗沢 学
美術/大嶋修一 音楽/丸山和範渡部チェル
アクション監督/宮崎 剛,金田 治
特撮監督/佛田 洋 VFXスーパーバイザー/高橋政千
監督/田崎竜太

感想(旧HPより転載)

 6人の生き残ったライダーたちが壮絶な潰し合いを続ける中、ミラーワールドに巣くうモンスターたちの誕生の経緯が明らかにされるシリーズの最終回が映画版としていち早く公開された、というのが売りの劇場版仮面ライダーだが、実際のところはテレビ版はテレビ版でヌケヌケと異なる最終回が放映されることになるのだろう。最近の東映テレビ部のプロデューサーは非常にマスコミ的な話題作りが巧くなったものだ。

 「突入!あさま山荘事件」でも採用されたバリカムというデジタルビデオ撮影機を使用したデジタル映画で、明るい場面ではフィルム撮影とほとんど遜色ないのだが、薄暗い場面では3倍速で録画したビデオのように暗部で水平方向のちらつきが目立ち、フィルムへ変換する際に技術的に未熟な部分があるように見える。

 デジタル特撮についても場面によるばらつきが大きく、前作よりも質量ともに欲張りになってはいるのだが、そもそもミラーワールドのモンスターそのものがメタリックな質感を持つ生き物という難物だけに、何がリアルなのかの判断が技術者たちにとっても難題だったのだろう。

 肝心のアクションも破天荒な発想を戦隊シリーズに委ねている関係上、まるでVシネマのような地味な舞台設定の中で、地味目のアクションの応酬が繰り返され、特に秀逸な見せ場がないのが辛い。

 ただ、お馴染みの登場人物たちのそれぞれの青春の結末が、いかにも「シャンゼリオン」の井上敏樹らしく苦々しく綴られてゆく後半は見物で、確かに「ガメラ3・邪神覚醒」と同じ趣向のラストなのだが、演出的にはこちらのうほうがはるかに成功しており、様々な細部について説明不足のまま強引に幕引きしようとする荒々しさがいかにも東映映画らしい荒削りな訴求力に繋がっている。

 ロビーナこと加藤夏希は「バトルロワイアル」の柴咲コウほどの殺気は感じられないものの、この映画でのもっとも儲け役で、姉の復讐のために仮面ライダーになったいかにも東映的なヤサぐれた小娘を好演して、はじめてその持ち味を発揮している。

 しかし、同時公開の「忍風戦隊ハリケンジャー・シュシュッと THE MOVIE」の楽しさについて触れないわけにはいかないだろう。アクション映画の劇伴(音楽・三宅一徳)としてはこちらのほうが遥かに成功しているし、お馴染みのキャラクターが総出演して映画版らしいド派手なアクションを釣瓶打ちにするサービス満点の趣向とともに特撮研究所の新撮場面の賑々しいミニチュアワークには涙を禁じ得ない。

 そして特記しておきたいのは音響演出の出色さで、アクションやメカの挙動に合わせて、右へ左へさらに回転もするダイナミックな音の移動感は「仮面ライダー龍騎」よりも数倍効果的で、音質そのものは措くとして、そのケレン味溢れる音響設計は他の映画も見習う必要があるだろう。是非ともシネコンでの鑑賞をお薦めする。

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