【多分ネタバレなし】全人類を、ハビタット世界に引きずり込め!『シン・仮面ライダー』

基本情報

シン・仮面ライダー ★★★
2023 スコープサイズ 121分 @イオンシネマ京都桂川
原作:石ノ森章太郎 脚本:庵野秀明 撮影:市川修、鈴木啓造 照明:吉角荘介 美術:林田裕至 音楽:岩崎琢 VFXスーパーバイザー:佐藤敦紀 副監督:轟木一騎 准監督&特撮監督:尾上克郎 監督:庵野秀明

感想

■ショッカーとは何か?ハビタット世界とは何か?プラーナとは何か?そして仮面ライダーとは何か?そんなギミックのすべてを庵野秀明が手前勝手に謎かけして、マニアックな早口で説明してくれる仮面ライダーリミックス映画。いや他の石ノ森作品も混じってますけどね。

■『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』そして『シン・仮面ライダー』と段階的に製作費が縮小していて、それは当然予想されたことだが、さすがに貧乏くさい部分がある。ロケ撮影もセットもこぢんまりしている。かと思えばキャストは豪勢で、特に長澤まさみは使い捨て状態。いや、若手女優の引き立て役を貫禄いっぱいに怪演するから、さすがのベテラン女優というべき。むしろ『シン・ウルトラマン』より良いかもね。

■『シン・ウルトラマン』が意図的に女優を変なアングルからブサイクに撮った(なぜ?)のに比べ、本作はヒロインの浜辺美波を非常に綺麗に撮っているのは立派で、それだけで作品が成立している。というか、撮影も照明もメインスタッフは同じなのにその違いは何??

■それに対して、池松壮亮柄本佑は完全に役不足で、不利な役どころだと思う。もっといろいろできる役者だからね。でも基本的に脚本は設定、考証ありきのスタイルなので、ドラマを語るより世界観を物語るタイプ。ゆえに浜辺美波西野七瀬の過去の因縁とかもしっかり描かれないから、どこにどのように感情移入すればいいのか困惑する。

■一番困るのはクライマックスが全部暗い場面なことで、トンネルの中とか薄暗いアジトの中とか、アクションが冴えないことこの上ない。VFXの手数としてはかなりのボリュームなのに、暗い場面では何がどうなっているのか見えないので意味がない。アクション演出としてもあまり新機軸がなく、仮面ライダーらしい長廻しの肉弾戦をスケールアップしてほしかったところ。VFX制作の手が多いのはわかるのだが、それにしてもCGIの質感が相変わらずなのは困った事で、白組も参加した大作なのに、正直何故に?と疑問は尽きない。『シン』シリーズって、そこは敢えてリアルテイストじゃなくて、いかにもCGIテイストを残すという選択をしているのかなあ。

■さらにいえば『シン』シリーズって結局新作曲の劇伴はオリジナル楽曲に全くかなわないことを無惨に露呈する作業で、本作も新作曲部分が悪くないのに、菊池俊輔の耳馴染みの良い70年代テイストの劇伴が流れるだけで条件反射的に燃えるから困るよね。リマスターで蘇ったエンドクレジットの子門真人の妙に若々しい歌声も鮮烈だけどね。

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