『リターナー』

基本情報

リターナー
2002/VV
(2002/8/31 浜大津アーカスシネマ/SC1)
共同脚本/平田研也
撮影/柴崎幸三,佐光朗 照明/上田なりゆき
美術/上條安里 音楽/松本晃彦
VFX/白組,Motor/lieZ,OMUNIBUS JAPAN,IMAGICA特撮研究所
監督・脚本・VFX/山崎 貴

感想(旧HPより転載)

 ギャングたちの裏取引を壊すリターナーとして暗躍するミヤモト(金城武)は未来からやってきたと語る謎の少女ミリ(鈴木杏)からもうじき起こる異星人との戦争を回避するために最初に飛来した異星人を抹殺する任務に協力するよう依頼されるが・・・

 「ジュブナイル」で多彩な才能が注目された山崎貴の監督第二作で、相変わらず達者な脚本と器用な演出ぶりを見せてくれる。特に撮影や美術、編集、そしてVFXのスタッフワークは日本映画のレベルを既に超えており、ハリウッドスタイルの完璧なコピーに成功している。もっとも、主人公のアクションなどあまりにもそのままのコピーはいかがなものかと思うのだが。

 平山秀幸とのコンビで堅実な仕事ぶりが印象深い柴崎幸三がステディカムの名手佐光朗と組んでハリウッドのアクション映画のキャメラワークを完璧にマスターしつつ、銀残しにも挑戦して、非常に渋い画調を作り出している。

 金城武を軽妙な性格付けにした部分は功罪があるのだろうが、裏稼業で生きてきた人間にしては、随分と脳天気な雰囲気になっており、やっていることととキャラクターの印象がちぐはぐな感じがしないでもない。 

 ただ、敢えて文句を付けるなら、仇役の岸谷五朗は貫禄不足だし、ラストのアクションの後の説明的な場面は蛇足だろう。脚本的な仕掛けとしては良くできてはいるのだが、せっかくの大アクションの切れ味を台無しにしかねない。小説なら成立する構成だが、映画でやられるとリズム感を損なう構成だ。
 実にウェルメイドな良くできた映画なのだが、「仮面ライダー龍騎」の荒削りな迫力に比べると随分甘口の仕上げになっているのは、プロデュース陣のリサーチを反映して時流に迎合した結果なのか、監督の趣味なのか、気になるところだ。

 それにしても、樋口真嗣神谷誠カメオ出演に気付かないとは恥ずかしい限りだ。
追記(2004/1/20)
 改めてDVDで観直すと、この映画の感情的な骨格を一人で支えているのは鈴木杏の演技であることが良くわかる。金城武は、ここではもっぱらアクションと見た目担当であり、演技的な貢献はほとんどないといってよい。撮影の名手・柴崎幸三、美術の名人・上條安里、VFXの達人・山崎貴の各分野の才能のコラボレートの結晶として成り立った映画である。

 物語としてはSFアクション映画としての完成度を目指すべきで、後日談の部分は映画的とはいえない。あっさりとカットしてアクション映画としての硬度を増すべきだ。それに、せっかくオイルリグなんて壊し甲斐のある舞台を設定したのだから、ミニチュアによる大崩壊シーンを見せるのが筋というものだろう。

 コメンタリーによれば、オイルリグの場面意外にも、未来世界の戦闘シーンなどには、合成素材として多数のミニチュアが使用されているようで、VFX演出の教科書として楽しむこともできる。是非メイキングを観てみたいものだ。

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