仮面ライダー THE FIRST
2005 ヴィスタサイズ 90分
DVD
脚本■井上敏樹 撮影■田中一成 照明■三重野聖一郎 プロダクションデザイナー■和田洋 音楽■安川午朗 VFX&CGI&WR■スタジオガラパゴス VFXスーパーバイザー■小林真吾 アクション監督■横山 誠 監督■長石多可男
仮面ライダー1号、2号の物語をメロドラマとして再生しつつ、併せてウエンツ瑛士と小林涼子のコンビに青春の悲劇性を投影したアクション映画、キャラクター映画の佳作。
ヴァリカムを使用した田中一成のキャメラはお世辞にも褒められたものではなく、銀残し処理もあまり巧くない。そのせいで、ヒロインの小嶺麗奈が、ヒーロー二人で取り合うほどの女性に見えない。演技力に大いに疑問が残る配役の弱さは、いかにもVシネマに毛が生えた低予算映画的だが、三角関係の中心に位置するヒロインは、何が何でも魅力的に写さないと映画が成り立たないだろう。
肝心のヒーローの二人の演技は極めて心もとないが、変身というギミックがあり、しかもそのデザインのリニューアルが成功しているおかげで、映画の瓦解を免れている。
しかし、この映画のもっとも斬新なところは、ウエンツ瑛士と小林涼子のエピソードの清新さであろう。
詳しくは明かせないが、二人の仮面ライダーの出自の陰画として悲劇のうちに潰えてゆく青春の無残さは、井上敏樹ならではの巧い作劇であり、長石多可男の全共闘世代ならではのトラウマが濃厚に反映されている。彼らの悲劇の存在にヒーローたちが全く気づかず、観客のみにその全貌が明かされるという作劇も、テレビではなかなか実現できそうもない思い切った野心的な試みで、予想外の展開に、正直身震いさせられ、思わぬ感動を味わうことができた。その狙いは、サム・ライミの「スパイダーマン」などより、よほどスマートに完成されている。