■総監督:樋口真嗣、脚本:伊藤和典、特技監督:田口清隆、VFXスーパーバイザー:佐藤敦紀という豪華なスタッフで期待も高かったけど、まあオフビートなドラマでした。特にシリーズ構成がスムーズではなく、第1話から第2話への繋がりすら歪だし、第4話『脱出!禁忌ノ森』(脚本:伊藤和典 監督:及川中)の加藤貴子の参加も同様。おまけに第6話『O mio babbino caro』で加藤貴子が主演となる番外編も謎が多い。
■ちなみにNHKの朝ドラ『あまちゃん』は2013年なので、皆川猿時もまだブレイク前。なので、これ誰?コメディアン?という感じだった。尾野真千子は朝ドラ『カーネーション』(脚本は渡辺あや!)が2011年だけど、この時期もう十分に大女優だった。ちなみにメイキングを見ると、MBS製作ということもあり、普段は関西弁でメイキングのカメラを回したりして、非常にリラックスした雰囲気。高橋一生はそれなりに役作りを考えたりしているけど、尾野さんはさすがにベテランの貫禄ですね。ちなみに、本作で尾野真千子と高橋一生がカップルになったらしい。
■若手の石橋杏奈は短いインサート的なカットで及川中監督に何度もダメ出しをくらって、大変そうだけど、これはキャラクターの掴みどころのなさによるもの。正直、さくらという人間像は分かりにくくて、このドラマの瑕疵になっている。おまけに、第1話で尾野真千子がカップ麺を異様に不味そうに食べているのは、何度もテイクを重ねて、麺は伸びるし、お腹は膨れるしで、リアルに食欲がなかったから。食べる演技は本当に大変だなあ。というか、現場進行の問題では?
■第1話『M確認ス、気特対出動セヨ!』(脚本:伊藤和典 監督:古厩智之)の刑事役で池田成志が出ていて、なんでも演劇界では有名な人らしいし、ドラマも映画もいっぱい出てるけど、名前を覚えたのは『今ここにある危機とぼくの好感度について』の澤田教授だった。
■第5話「吠谷町M防衛線」(脚本:田口清隆、樋口真嗣、伊藤和典、監督:田口清隆)は当時から話題になった(よね?)回で、ついに巨大怪獣が現出。その名はシッポン。映像表現は徹頭徹尾、田口監督イズムで統一され、自衛隊(陸自)は過剰に生々しく、合成はマッチムーブ主体で、誰が見ても田口監督だよね、という出来栄えで傑作。しかもシッポンはCGではなくミニチュア特撮班が組織され、桜井景一、春日佳行といったベテラン勢が参加する豪華編。メイキングでシッポンのぬいぐるみも披露されていて、全身像が明らかに。しかもVFXの出来栄えは最近のブレーザーよりリアルだったりするから侮れない(マジで)。特撮現場では樋口真嗣や佐藤敦紀がお目付け役としてニヤニヤしているぞ。田口清隆の代表作と言って過言でない秀逸な怪獣ドラマ。
■総監督の樋口真嗣が満を持して登板する第6話「O mio babbino caro(私のお父さん)」(脚本:伊藤和典、監督:樋口真嗣)は再見してもお話がよくわからない。小津調でモノクロ、スタンダードのマニアックな映像づくりもあまり有効ではなく、第4話から唐突にメンバーに加わった加藤貴子が主演というのも違和感があり、どうもシリーズ構成としては褒められない。脇道にそれすぎ。「怪獣」のアクセントを敢えて「か」にアクセントを置く発音にしたのもこだわりだけど、昭和25年に父に心を残す娘(加藤貴子のおばあちゃん)の思いを幻想の中で追体験させるS(橋本愛)の意図はなに?
■スピンオフドラマで『MMY 残ル業ニ給モ無シ』(脚本、監督、編集:田口清隆)というのがあって、今回始めて観たけど、どんどんくだらないコメディに崩れていくのが、なかなか楽しい。皆川猿時、松尾諭、中村靖日の三人が残業中にいろんな小事件に遭遇したりするアドリブドラマ。田口清隆って、特撮はもちろん専門だけど、こうした本編の現場で場数を踏んで役者捌きを学んだことが大きかった気がするなあ。