へんげ
2012 ヴィスタサイズ 54分
みなみ会館
脚本■大畑創
撮影■四宮秀俊 照明■玉川直人、星野洋行
美術■伊藤淳、間野隼人、福井早野香 音楽■長嶌寛幸
特技監督■田口清隆 監督■大畑創
■低予算の自主映画なのに、何故か田口清隆が特技監督として参加し、なんでも怪獣映画らしいと話題の本作、遂に観ることができた。いったい、どんな映画なのか?と興味は尽きなかったわけだが、期待にたがわぬ痛快な力作である。
■何故か夫が次第に怪物化してゆく恐怖を妻の視点から描き、中篇ゆえに十分にサスペンスが盛り込めていない残念さはあるものの、ホラー映画、モンスター映画、そしてついに怪獣映画に変貌してゆく、その映画ジャンルのエスカレートぶりが何にも増して痛快。そして、思わず息を呑むクライマックスの大破壊、低予算のデジタルビデオ撮影ながら、ここまで大風呂敷を広げられるのかと感心するやら、呆れるやら。スタッフの意気に感じる清々しい映画なのだ。
■正直、ホラーとしてもモンスター映画としてもそれほど演出的に優れてはいないし、お話の組み立ても、決して斬新なものではなく、昔の映画やテレビで散々見てきたアイディアではあるのだが、今回はそれを夫婦の情愛の物語として一本筋を通したのが成功の鍵。それはクライマックスの妻の叫びに集約される。これは大畑創監督やりやがったなという発見で、近年こんなに観客の気持ちをストレートに汲み取る台詞は無かったよ。
■特撮場面はクライマックスに結構たっぷりあり、ちゃんと村川総が撮影しているし、プロの特撮スタッフが参加している。とにかく気宇壮大な話なので特撮の精度は二の次でインパクト重視だが、特撮博物館で上映中の「巨神兵東京に現わる」は実は本作の続編ではないかと感じた次第。
■同時上映の「大拳銃」はもっとリアル寄りな演出で、これもデジタルビデオで撮ったとは思えないルック。16ミリで撮ったといわれても信じます。そして、硬質な活劇になっており、非常に感心した。怪しい男から拳銃制作を依頼された潰れかけの町工場の社長兄弟のサスペンス豊かなお話で、個人的にはこちらの方が好物。
■依頼主の正体には実はポカン?となったのだが、実は北海道警察で実際に起こった事件を下敷きにしているそうで、これは参りました。しかも、タイトルどおり拳銃のでかい奴を勝手に作ってしまうという謎の展開。もはやそれは拳銃ではないだろうと思うが、あくまで大きな拳銃だよと言い張る大畑創監督の思い入れには恐れ入る。その異形ぶりが後半にまだ十分生かされていない気がするので勿体無いと思うのだが、これ90分くらいの長編映画に仕立て直してほしいなあ。というか、10年くらい前ならそのままVシネマに焼き直しできたはずだな。いかにも訳ありげな主人公の妻の描き方にしても、若い監督とは思えない大人の視線が感じられる。