結局、田口清隆の売出し企画だったのか?『MM9』雑感(後編)

■第9話「密着!気象庁特異生物対策課24時」(脚本&監督:田口清隆)は田口監督十八番の「密着24時間」もので、これ以降ウルトラシリーズでも踏襲することになる名物路線。と、なんとなく思っていたけど、「ウルトラマンX」でやったきりですね。でも、あと何年かすれば、田口監督がゴジラを撮る順番が回ってくるはずなので、そのときにはこのスタイルでいいんじゃないかな?意表を突いて思いっきり低予算で番外編的な『密着!ゴジラ24時』を作ればいいと思う。

■冒頭の、シッポンの同類のザメゴンの特撮も短いながら、なかなか手間のかかった特撮で、メイキングをみても、徹夜撮影だったもよう。メガドレイクの出現も完全に田口スタイルの演出で(無駄に?)見ごたえがある。お馴染みの(?)ヌーさんの衝撃映像は田口監督じしんがぬいぐるみを着て演じたが、そのあまりにゆるい映像を観て総監督の樋口真嗣が「なにこれ?」と真顔で呆れているのが趣深い。

■実はMM9で一番素朴に楽しかったのが、第10話「新世界」(脚本:伊藤和典 監督:及川中)で、課長(皆川猿時)と部長(松重豊)が居酒屋で飲みながら半分仕事絡みの話をしているだけのエピソードだけど、なかなか秀逸。単純にあのお祭り居酒屋楽しそうなんだもの。課長と部長の話が、踊りながら闖入する店員にたびたび遮られるという、それだけのお話だけど、やっぱり面白いわ。深夜ドラマならではの緩さ。

■第11話「それぞれの聖夜(イヴ)」(脚本:伊藤和典 監督:古厩智之)は、クリスマスイブに逢えない不倫相手の男を恨みながら、尾野真千子が怪獣を(心のなかで)呼ぶお話で、高橋一生の灰田班長は恋人と一戦交えたあとに、様子のおかしい尾野真千子の部屋を訪れるという大人のお話。灰田班長、精力強すぎです。若いね!尾野真千子は幼いころに淡路島に突如出現して阪神間を襲撃したスカイウォーカーに両親を殺された過去がある。でも、クリスマスイブに浮かれる幸せな人々に対して怨嗟の念を滾らせて、夜の街にスカイウォーカーを呼ぶ。けど、来るはずはないので一人の聖夜に豚キムチを作って食べる。。。悪くない。

■でも最終的に樋口真嗣担当回がどうも不発なので、なんだかもやもや終わった気がするし、再見しても同様の感想。橋本愛のS(怪獣未満の精霊的な存在)の扱いも中途半端で消化不良だったし、シーズン2がある予定だったのかなあ?樋口組の最終2話でも特撮班が組織されて、田口組の素材と一緒にミニチュア撮影が行われたが、一部は樋口監督が直接指示しているようだ。でも今見るとCG部分が厳しいね。

■スピンオフの『MMY』も13話で完結したけど、意外にこれが楽しくて、『あまちゃん』でブレイク前の皆川猿時が大活躍。これも田口監督の代表作かも。EPISODE.11の「クッキーの話」はしみじみと泣けますよ。。。

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