ウルトラマンサーガ ★★★☆

ウルトラマンサーガ
2012 ヴィスタサイズ 90分
ユナイテッドシネマ大津
脚本■長谷川圭一
撮影監督■高橋創 照明■関口賢
美術■木場太郎 音楽■原文雄
VFXプロデューサー■鹿角剛司 VFXスーパーバイザー■前川英章
特技監督三池敏夫 特撮撮影■高橋義仁
特撮照明■武山弘道 特撮美術■耵山弘平
監督■おかひでき

■前作『ウルトラマンゼロ 超決戦!べりアル銀河帝国』が予想外の上出来で嬉し涙を流したもので、本作を見に行くのがちょっと怖かったのだが、どうも評判は上々のようなので恐る恐る劇場へ足を運んだ次第。ところが、これは良い、良い、なかなか素晴らしい快作。なにより、映画に勢いがある。小さな瑕とか映像の完成度の低さも気にならない熱いドラマがある。映画にとって一番大切なものがここにはある。

■冒頭の地球防衛隊による食料の徴発シーンからおかひでき監督の80年代映画愛が炸裂し、もうこのシーンだけで泣ける。その後アーストロン出現とチームUの出撃で正統派怪獣映画好きを唸らせ、ウルトラマンダイナの堂々たる登場で一気に加熱する。特技監督三池敏夫だが、本作は非常に低予算で制作されたらしく、お得意のミニチュアワークも必要最小限に止められている。それでも要所要所にこれは!というカットが散見され、意欲満々。中盤に登場のゴメスなど、もう少しコクのある演出が欲しいところだが、予算的にはやむを得ないか。そのかわり、何故かグビラが大活躍で、儲け役。

■伊丹グリーン劇場で8ミリ映画を観てから、おかひできの名は特撮映画や特撮テレビ番組で断続的に気にし続けていたのだが、今回非常に幸福な映画監督デビューとなった。そして、何より大阪芸術大学で8ミリを撮っていた頃の勢いをそのまま持ち続けていることに驚く。とにかく熱い、熱い。加えて、コメディ要素もてんこ盛りで、中盤のゼロの変身シーンは傑作。笑って泣ける、見事な”松竹映画”だ。

■劇場版ウルトラマンでは長谷川圭一の脚本に正直辟易することが少なくなかったのだが、今回はお馴染みの子供を使った長谷川節は全開するものの、お馴染みの光と闇といった宗教的なモチーフは抑制して、ヒーローとは何かというお話にしたのは正解だった。また、AKB48のメンバーが演じた地球防衛隊の結成秘話なども非常に巧く作っており、あの場面は思い出すだけで泣けてくる。ラストのサーガとチームUの共闘も伏線がうまく効いてお見事な作劇だ。

■正直、本作は特撮を褒めるよりも本編のドラマの熱気を褒めたいし、特に秋元才加の巧演を愛でたい。ウルトラマンたちよりも、よりヒーローらしいヒーローとして惚れ惚れする男前ぶりを見せる。映画に出るために生まれた娘じゃないか、というくらいのハマリっぷりが凄い。

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