お父ちゃん、肉親は、殺せても捨てられないんだよ by渥美マリ『しびれくらげ』

基本情報

しびれくらげ ★★★
1970 スコープサイズ 92分 @アマプラ
企画:関幸輔 脚本:石松愛弘増村保造 撮影:小林節雄 照明:渡辺長治 美術:後藤岱二郎 音楽:山内正 監督:増村保造

感想

■ファッションモデルの娘(渥美マリ)には繊維会社のエリートサラリーマンの恋人(川津祐介)がいて、その会社のモデルを務めていたが、一方で自堕落な父親(玉川良一)があり、ヤクザ(草野大悟田村亮)に付け込まれて脅されると、ヤクザと関係があるモデルは一流企業の宣伝に使えないと解雇されるし、恋人には愛想を尽かされて別れを告げられるはめに。。。

大映末期のエロ映画路線を誠実に担ったエース監督の増村保造はホントに会社思いの生え抜きで、そのことは東映深作欣二佐藤純彌にも感じられる戦後世代特有の性質かもしれない。深作欣二フィルモグラフィーなんて、あんたどれだけ会社(東映)が好きなの?と問いただしたくなるほど。当時、「企業内抵抗」なんて言葉もあったけど、抵抗というよりも会社を儲けさせ、社員(=組合員)を食わせることの方に意識的な努力があったとしか思えない。そして会社のお仕着せ企画に職人として誠実にサービス満点に応えながら、自分自身の旗印も鮮明に刻印する映画作家でもあった。

■後輩監督が1969年に立ち上げて、1970年に集中的に製作された渥美マリ主演の軟体動物シリーズの途中に位置づけられる本作も、増村保造にしか撮れない映画で、日活でも似た傾向の女性映画があったりしたがあまり成功せず、東映では全くタッチもニュアンスも異なるものになるはずの、極めてユニークな女性映画で、風俗映画。でも風俗映画の部分が露骨に弱くて、そこは日活映画の方が得意で、センスもいいと感じる。大映はどこまでいっても暗くて泥臭い社風なのだ。

■ファッションモデルを渥美マリが演じて、冒頭から下着のファッションショーとはいいながら、実質的にはストリップにしか見えないエロティックなショー場面でとっくりと渥美マリの姿態を見せる演出は真正面からエロを描こうとする。実際、渥美マリは演技的にも自信たっぷりの好演で、惜しげもなく脱ぎまくるし、スタイルも抜群なので見栄えする。渥美マリの魅力がこの映画の眼目であることは間違いないし、かなりの逸材だったと思う。

■途中まで主演級の活躍をするのが玉川良一で、十八番のダメおやじ役を安定して演じるが、演技が一本調子なのは増村の演技指導で、本来はもっとメリハリの効いたニュアンス芝居もできる人。同じことは川津祐介田村亮にもいえて、いつものような棒読み演技を強いられる。演技派には辛い演技指導だと思うけど、増村組はこうじゃないとOKが出ないと納得していたはず。

■おなじみの場末のヤクザものを演じるのが草野大悟田村亮のコンビ(さらに平泉征!)というのが本作の見どころで、根岸明美が例によって因業な色気年増女を演じる。なんだかこのあたりの作風は吉本新喜劇レベルのお約束感だなあ。実際のところ。そこに草野大悟が登場するのが嬉しいところだし、その相方が当時は実相寺組の印象が強い田村亮というのが70年代テイストで嬉しい。顔ぶれだけで得した気がする。

渥美マリとチンピラやくざの田村亮が後半にどう絡むのかというのがドラマの見どころで、そこはさすがに抜かりがないので、ホントに感心する。見事に堅牢な構成で、ラストの決着に向けて全体のバランスもキレイに構築されている。このあたりは、増村保造が「ザ・ガードマン」のお目付け役の合間に脚本を加筆しているようなので、絶対に外さないし、狙い取りにピタリと嵌めるし、テーマも明快。ホントにそのブレの無さは凄いと思います。

■せっかくの渥美マリの主演でファッションモデル役なのに全くファッショナブルではないのは残念なところだし、もったいないとも感じるが、場末に生きる女の浮き沈みと起死回生を描く女の半生ものとして観るべき映画だろう。そういえば、増村の映画って、素直に青春映画にはならないんだよなあ。大映最後の作品『遊び』も、出演者は若いのに青春って感じがなかったもんなあ。。。

参考

このあたりは露骨に増村映画を意識した企画だと思います。西村昭五郎の『花を喰う蟲』
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増村が日活から浅丘ルリ子を招きました。怪作だけど生粋の増村映画で純度は高い『女体』
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若尾文子のれっきとしたエロ映画で鮮烈な流血映画の傑作。『夫が見た』は何度見ても圧倒される。
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ザ・ガードマンのクオリティコントロールは増村の功績です。
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小沢昭一を日活から招きました。小沢昭一って、東宝でも有名だけど、やっぱり日活の人なんだよね。最近認識したけど。
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