昭和元禄玉の輿?魔子・きっこ・早苗でパンチ・パンチ・パンチ!ザ・ガードマン『女の出世は結婚サ!』

■1970年11月に放映されたザ・ガードマンの第295話。脚本は藤森明と増村保造、監督はお馴染みの宮下泰彦。緑魔子、松岡きっこ、中原早苗というレギュラーゲスト女優陣による不謹慎このうえない喜劇。ザ・ガードマンとうシリーズはなかなか懐が深くて、怪談物を撮るときはこれ以上ないというくらいに凝った照明を作るし、本作のような喜劇の場合は平明なベタ明かりを選択する。

■しかし、もうネタも切れつつあるけど、とにかく視聴率がいいし、刺激があれば何やっても受けるだろうとばかりに、凶悪な作品を連打する末期のザ・ガードマンだけに、単純な喜劇かとおもいきや、ちゃんと(?)良からぬ方向に着地して見せる。

■三人の行き遅れの看護婦(当時)がセスナの事故で担ぎ込まれた大会社の社長の御曹司の嫁になるべく看護合戦を繰り広げる前半、後半は花嫁候補として、御曹司の看護を大邸宅で行う三人だが、何者から長男を殺そうと計画しているらしく、というお話。基本的に単純なお話だが、最終的に主役は緑魔子で、あとの二人は盛り立て役とわかる。

■ラストの種明かしはさすがに言えないが、この当時の精神障碍者に対する一般的な認識の具合が如実に台詞に表現されていて、いまとなっては資料として貴重かもね。差別語として無かったことにされかねない風潮のなかで、こうした映像資料は残していかねばならないと単純に思う。ガードマンの面々も緑魔子の境遇を実に単純に、自業自得の笑い話にして笑い転げているから、今の感覚で観ると、ホントに当時の認識の低さはヒドイよね。

■しかし、基本的に不謹慎な喜劇だったはずのドラマが、ラストで妙な具合に不思議な感慨に辿り着くから増村保造が脚本を輔弼(たぶん)した意味が納得できる。「おいしい?」「おいしい」、「しあわせ?」「ああ、しあわせだ」といったいかにも増村的な単純な台詞のやり取りが、まるで『清作の妻』のような男女の関係性を醸し出しているのだ。嘘から出た実、欲得ずくの玉の輿から、何かが生まれ出ようとする瞬間を切り取ってドラマは終わる。それは女にとって不幸なのか幸せなのか、なにが不幸でなにが幸せなのか、不謹慎から出た実(まこと)を狙った増村は基本的に生真面目な人なのだった。

ザ・ガードマン 1970年度版 DVD-BOX(前編)

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ザ・ガードマン 1970年度版 DVD-BOX(後編)

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