宍戸錠の浪速モノはチト厳しいのだ『現代悪党仁義』

基本情報

現代悪党仁義 ★★☆
1965 スコープサイズ(モノクロ) 103分 @DVD
企画:水の江瀧子 原作:佐川桓彦 脚本:若井基成 撮影:山崎善弘 照明:三尾三郎 美術:千葉和彦 音楽:三保敬太郎 監督:中平康

感想

大阪府警の元警部が明かした詐話師の実話から構築した犯罪コメディ映画で、当然ながら大阪ロケも敢行したが、どうもいまいち弾けない凡作。

■冒頭に当時の防衛予算に相当する3000億円ぶん稼いで「詐話師自衛隊」を創設したれ!と怪気炎を上げた割に、加古川の刑務所で同じ房だった殺人犯のおっさんのために80万円の借金の取り立てを請け負うというお話で、あまりにショボくて、竜頭蛇尾。。。

宍戸錠は『河内ぞろ』シリーズなどで浪速映画には馴染みがあるのだが、そもそも演技の上手いタイプではないので、河内弁も大阪弁もオーバアクトで、浪速映画らしい情感があるわけでもなく、しょうじき観ていて落ち着かない。田宮二郎のまくし立てる舌鋒の滑らかさには到底及ばないし、地に足がついていない感じが拭えない。他のキャストも意図的に関西系の俳優を使わない方針で、というかいつもの日活脇役勢で賑やかにという趣向だけど、意外にも中平康ってコメディが冴えない。同時期でもこれがヤクザ映画なら、同じメンツがリアルに怖いヤクザを演じるのに。土方弘だって天坊準だってそうだ。

■この時期の中平康の演出はすでに酒飲みながら演出していた頃なので、1カットでいけるところはワンシーンワンカット、しかもキャメラはフィックスで乗り切る方針で、特にセット撮影は長廻しが基調になっているけど、これもテンポを悪くしている。例えば森一生も、喜劇俳優を揃えた映画では、その芸に委ねて敢えてカットを割らず、キャメラはフィックスでそのまま撮るというスタイルで確実に笑わせたものだが、要は芸の力次第というところがある。本作の場合、せめてカットを割って弾けるテンポを出してくれないと、お話の薄さゆえに持たない。後で撮った『結婚相談』ではもっと的確にカットを割っていたけどね。

■ホントに良いところが見当たらないので、困った映画。藤村有弘も小沢昭一も特別出演で、このクラスがもっと本格的に絡んでくれないと面白くならないよね。

参考

増村保造のこちらの方がぜんぜん上出来でっせ。『現代インチキ物語 騙し屋』
maricozy.hatenablog.jp
中平康はこうした人間喜劇は得意だったのだ。特に『才女気質』は傑作。でも、喜劇よりも暗い映画が実は資質じゃないかという気がする。
maricozy.hatenablog.jp
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