バリー・シール アメリカをはめた男 ★★★☆

American Made
2017 スコープサイズ 117分
イオンシネマ桂川

バリー・シール  アメリカをはめた男
■CIAにスカウトされて中米各地の偵察飛行に従事するうち、麻薬カルテットのコカインの運び屋も兼ねるうち、ニカラグアコントラにも武器を運ぶようになり、田舎町を実質支配するほどの大金持ちになってゆく実在の男をトム・クルーズが演じ、信任厚いダグ・リーマンが監督した快作。
■CIA底抜け大作戦といった風情の場当たり的な裏工作であぶく銭をぼろ儲けしてゆく痛快譚でもあるが、アメリカ裏面史としても非常に面白い。あまりに手広く儲けすぎてCIAのコントロールもきかなくなるが、訴追されても利用価値の方が大きいので保釈されるというさすがのアメリカン司法判断。やっぱ、アメリカって最高だよという台詞が皮肉に響く。痛快で骨太な社会派娯楽映画。
■実際の人間関係や組織関係は相当複雑なはずだが、非常に簡潔に整理して非常にわかりやすく見せ切った脚本が秀逸。ダグ・リーマンの演出も簡潔で変なキャメラワークもなく、分かりやすさ至上主義の作り方。でも、色調とか画質には70〜80年代のビデオ映像のタッチを盛り込んだりしている。特に色調は少し派手すぎる。エンドクレジットでは当時のVHS独特のノイズ(特に赤色に乗るノイズなんて懐かしい)を再現したりしているけど、若い人には何のことやら理解できないだろう。
■リアルに配役すればトム・クルーズでは絶対ないのだが、この実録映画をスター映画として骨太娯楽映画に仕上げるという愉快な企画で、トム・クルーズも気持ちよさそうに快演している。とにかく、トム独特の”困った”演技にますます磨きがかかって、「オール・ユ―・ニード・イズ・キル」でも彼の”困った”演技をフィーチャーしていたダグ・リーマンだから、これは狙ったに違いない。ヤバい人間や組織に関わって、次々と命に係わる危機に遭遇しながら、いつもの爽やかな笑顔でごまかしながら、頭の中では生き残るためのギリギリの計算を働かせる場面がいくつも登場するわけだが、その中で軽快に極限状態をするりとかわすトムの困り顔には毎回痺れる。