三たびの海峡 ★★☆

三たびの海峡
1995 ヴィスタサイズ 123分
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原作■箒木蓬生 脚本■加藤正人神山征二郎
撮影■飯村雅彦 照明■小林芳雄
美術■山崎輝 音楽■佐藤勝 デジタル合成■大屋哲男、木村俊幸ほか
監督■神山征二郎

■戦時中、九州の炭坑で強制労働させられ、労務職員を殺害して脱走、アリラン部落や朝鮮人の侠客に匿われて命拾いした朝鮮人青年が戦後韓国で成功するが、当時の炭坑の労務監督が市長となってボタ山とともに同胞たちの墓を潰そうとしていることを知り、日本にやってくる・・・

終戦50年の年に公開された映画だが、あまり大規模に公開された記憶は無い。あまり一般の日本人に歓迎される物語ではないだろうが、なかなかの力作である。神山征二郎にしては珍しく、炭坑での地獄のような強制労働の姿を、えげつなく描き出す。加藤正人の筆による筋運びも着実で、過去と現在のエピソードを並行させて、サスペンスも効いているし、主役の李鐘浩という役者も上手いので、非常に見応えがある。配役も何故か豪華で、風間杜夫樹木希林泉ピン子といった芸達者な脇役たちがいい味を出している。特に、助演の風間杜夫がうまい。

■ただ、三国連太郎と隆大介のラストの因縁の決着のアクション場面が失敗しており、結果、画竜点睛を欠くことになってしまった。このあたりは、東映映画の監督であれが、絶対に外さない部分だと思うのだが、残念なことに神山征二郎はどうも活劇映画に通じていないようなのだ。この場面のアクションをもう少し補強できれば、佳作になったと思うのだが、実に残念だ。

■しかし、労務監督としての隆大介の言動については、それほど人非人とは見えず、主人公の行動が逆恨みに見えないこともないのが、演出上辛いところで、やっぱり酷い奴だというだめ押して、永島敏行の自殺のエピソードが登場することになるのだろう。永島敏行という役者も、決して上手いとは思わないが、ほんとうに誠実な人だと感心するよ。

■しかし、一番の驚きは、主人公と結婚する日本人娘を演じた南野陽子の良さだ。「白い手」の頃は、まだ大分硬かったが、この作品では南野陽子の綺麗さが際立つし、演技的にも意外なほど色っぽい。この線でもっと伸びれば、女優としてもっと大成したのではないか。キャリア上、どうも、どこかで途切れている気がするのだが。

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