空の定義
ハイビジョンシアター NHK hi
2009年 俳優座劇場
作■青木豪 美術■柴田秀子 照明■中川隆一 演出■黒岩亮
楽曲「亡き王女のためのパヴァーヌ」フジ子・ヘミング
出演■名取幸政、松永玲子、浅野雅博、中嶋しゅう、塩屋洋子、津田真澄、杉山文雄
■ある日、小さな喫茶店を営む父親が再婚話を切り出す。元妻が過激派の活動家で海外で革命兵士として活動後服役中と知ったうえで、相手は結婚を望んでいるというが・・・
■地方の喫茶店内を舞台に、イスラエル、パレスチナ情勢や世界同時革命や新左翼活動といったテーマが、今日的な社会情勢や家族関係とどう関係しているかを、コメディタッチ（！）で、しかも約９０分で語った恐るべき企み。７０年安保の革命運動をいまだ引きずる初老の登場人物（中嶋しゅう）も堂々と登場するので、あまりにマイノリティな間口の狭い芝居のはずだが、家族ドラマとして、しかも部分的に吉本新喜劇のようなコメディとして演出したあたりに、凄さを感じる。
■運動の失敗を次の世代が笑いながら蹴飛ばして、新しい運動を作っていってほしいという塩屋洋子の台詞が泣かせる。本当に、当時戦った世代がそう言ってくれるのかどうかは定かでないが、青木豪は彼らの世代を、そう総括したようだ。こうした複雑な題材を、ここまで軽やかに構築した青木豪の割り切りのよさには舌を巻く。
