【最終更新 2023/3/21】
■原案:原雄一、音楽:川井憲次、脚本、演出:黒崎博
■黒崎博は『火の魚』でいっぱい賞を撮った人ですね。あの秀作ドラマ『逃げる女』を中島由貴と撮った人でもある。
さすがに受賞歴多数のキャリアにふさわしい企みに満ちた実録再現ドラマ。
先週放送されたドキュメンタリーはあまり新しい情報が無く、既読の印象だったが、実録ドラマはちょっと気合の入り方が違う。
■中村泰という老革命家(スナイパー)の人物像をイッセー尾形が自由に発想して演じ上げるのだが、まあ、これほどユニークな演技は最近みたことが無い。
そもそも中村泰という実在の囚人の人生が破天荒にも程がある、考え得るリアリティを完全に超越した人生なので、それをストレートに演じるだけでも十分不自然なのだが、イッセー尾形は独自の演技哲学に沿って、一見小手先の怪演に見えかねない演技プランを提示してくる。
しかし、それが国村隼の抑えた演技と溶け合って、非常にリアルな実在感を放つ。国村隼が中村本人と共演しているかのようなリアリティだ。
このイッセー尾形の希有の演技は演技教室の教材に使えるはずだ。
安易にまねできるメソッドではないけどね。
まあ、ホントに凄いからみなさん、ぜったい観た方がいいよ。
今年のすべての映像作品中でも特筆すべき事件ですよ。
■警察庁長官狙撃事件の多分真犯人ながら、オウム真理教の犯罪にしてしまいたい公安部との確執でその存在が有耶無耶にされてしまうという皮肉な構図のドラマ、というよりも、やっぱり人間・中村泰の不思議さが深く感動的な、異色作。
黒崎博、確かにただ者ではないな。
補遺
毎日新聞に新事実が報道されました。警察庁長官狙撃事件の犯人確定じゃないですか!
受刑者は男性に長官狙撃の動機として「警察に恨みがあった」と語ったという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/cb637138fd43b5c460e7ec66d5d3c85ccb1a9074news.yahoo.co.jp