母さん、僕のあの”革命”、どうしたんでしょうね...『化石の森』

基本情報

化石の森 ★★☆
1973 スコープサイズ 118分
原作:石原慎太郎 脚本:山田信夫 撮影:岡崎宏三 照明:榊原庸介 美術:粟津潔
音楽:武満徹 監督:篠田正浩

化石の森 <東宝DVD名作セレクション>

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  • 発売日: 2019/12/18
  • メディア: DVD

感想

医学生ショーケンは再会した高校の同級生の娘が変態上司にストーカーされているのを知ると新開発の農薬を使って毒殺することを決意する。しかし縁を切ったはずの母が田舎から上京して彼に付きまとい始めると...という犯罪ドラマを心理劇として構築した青春映画。
■主演はショーケンですが、脇を文学座一派で固めた配役が妙で、母親は杉村春子だし、ヒロインは二宮さよ子だし、小児がんの子供を抱える薄幸な主婦が八木昌子で、しかもヒロインたちは惜しげなく脱ぎます(春子は除く)。二宮さん、確かにスレンダーでスタイル良いし、すべすべで綺麗。いい時代だったなあ。
■お話は、石原慎太郎による学生運動の総括といった図式劇で、学生運動の発端が多くは医学部の制度腐敗問題であったことを踏まえて、苦学生ショーケンが死んだように生きている大人たちの住む「化石の森」に対して殺人という抵抗を試みる。ところが、その鬱屈した怒りに対して、女たちが寄ってたかってその精神を骨抜きにかかる。
■田舎の母を捨てて都会で生きる決心をしたのに、母との抜き差しならぬ血縁はどこまでもついて回るし、最終的にショーケンは母が子供の手から危ないおもちゃを取り上げるように、息子の”革命幻想”を打ち砕き、彼は再び母の胎内からやりなおす羽目に陥る。
■しかし、ホントはもう少しリアルに描いてくれないと切実さが伝わらないところがあり、そもそもショーケン苦学生のはずなのにアルバイトしている気配も無いし、篠田正浩の描き方は中途半端。青春映画のはずだが、ヒリヒリする心の痛みが伝わらないところが、この映画の弱点だろう。
■なんといっても見どころは、良心の呵責に苦しむショーケンを宗教に誘う教団の男を岸田森文学座!)が演じているところで、いつものように1シーンの登場だが宗教と医学をめぐる問答があって台詞は多く、岸田森メソッドの見本市といった雰囲気で見ごたえ十分。実相寺昭雄の映画用に剃り上げたリアル禿頭で、キリスト教のようでも神道のようでもあるいで立ちからして怪しさ満開だが、実に素晴らしい演技。
杉村春子が二宮さよ子に、女は男を通して世間をみるのよと諭す場面が、さすがに春子の貫禄十分で名シーンだったけど、あまり全体の中で生きていない気がするなあ。勿体ない。

参考

青年の革命幻想を打ち砕くのは常に田舎のおっかさんなのだ!革命運動が挫折する運命にあるのは、お母さんを説得する言葉を見つけられなかったからだ!(ホントか?)
maricozy.hatenablog.jp
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