美しさと哀しみと ★★★☆

美しさと哀しみと
1965 スコープサイズ 106分
DVD
原作■川端康成 脚本■山田信夫
撮影■小杉正雄 照明■青松明
美術■大角純一 音楽■武満徹
監督■篠田正浩

■文豪川端康成の困った性癖を主題とした文芸メロドラマだが、非常に面白い。篠田正浩の映画では上出来な部類だ。

■冬枯れの京都ロケと、八千草薫の住居を中心としたステージ撮影の様式美が素晴らしく、複雑な移動を駆使した長廻しの場面など、傑作といえる。小杉正雄の撮影と、青松明の照明のコンビは最強だ。山村聡加賀まり子が初対面するホテルのラウンジの場面はロケだろうが、背景の素晴らしいボケ味が見事な立体感を生んでおり、まるでセット撮影のような堅牢な画作り。

■ただ、加賀まり子山本圭が中心となる琵琶湖の終幕がそれまでの緊迫しきった劇構成と様式美に比較すると弛緩しており、結末もそれまでのどろどろした研ぎ澄まされた人間関係に対する決着としては不十分だろう。

■今では差別語と呼ばれる単語が頻出するのでNHKでのテレビ放映も難しいだろう。

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