空気人形
2009 ヴィスタサイズ 116分
ロコ9シネマ
原作■業田良家 脚本■是枝裕和
撮影■リー・ピンビン 照明■尾下栄治
美術監督■種田陽平 美術■金子宙生 音楽■world's end girlfriend
操演■根岸泉 視覚効果■松本肇
編集、監督■是枝裕和
■ぺ・ドゥナが爆発的に可愛い傑作ファンタジー、そして遅れてきたアイドル映画。ある日、心を持ってしまったラブドール(ダッチワイフね)は主人の居ぬ間に町に彷徨い出て、ある青年に一目惚れ。さまざまな人間たちとのふれあいの中で、人間の命とか心とかいうものを学んでゆく現代の寓話。
■美術監督は「ヴィヨンの妻」にも参加した超売れっ子の種田陽平で、孤独な男のセックスを重要なモチーフとする本作を女子観客に向けてアピールするため、ガーリーでポップなデザインと色彩を用意する。おかげで、ぺ・ドゥナの七変化が堪能でき、一世一代の名演を見せる。この配役は凄いし、ヌード(ため息が出るほどの綺麗さ)も辞せず、空気人形の哀しみを演じきったぺ・ドゥナも凄い女優だ。たどたどしい日本語が、心が生まれたばかりの空気人形の初々しさを表現して、素直に感動する。
■終幕の哀しい結末と、過食症の星野真里が冒頭のぺ・ドゥナの台詞を受け継ぐラストシーンの美しさは衝撃的といっていいほど。もう冒頭の空気人形が立ち上がって窓辺の雨だれに触れて人間の姿に変わるシーンから涙が止まらないし、ラストシーンは号泣したいほどだ。本年屈指の傑作だ。
■特撮スタッフは、昭和の特撮に精通した面々が終結し、空気人形はデジタル合成でもCGでもなく、操演で動く。ファンタジックなアニメ合成もあるが、CGではなく、手描きのアニメを合成しているらしい。テレビマンユニオンとは縁が浅くも無い実相寺昭雄が生きていたら、きっと悔しがったに違いない。こんな特撮映画が撮りたかったのだと。