スパイ・ゾルゲ ★★☆

スパイ・ゾルゲ
2004 ヴィスタサイズ 182分
レンタルDVD 
脚本■篠田正浩ロバート・マンディ
撮影■鈴木達夫 照明■三上日出士
美術■及川 一 音楽■池辺晋一郎
VFXプロデューサー■大屋哲男 VFXスーパーバイザー■川添和人
監督■篠田正浩


 ソ連共産党のスパイとして上海で活動中に尾崎秀實(本木雅弘)と知合ったゾルゲ(イアン・グレン)の次の赴任先は日本だった。ゾルゲは軍閥政治の台頭で太平洋戦争に向かおうとする日本首脳部の情報を尾崎の協力で掴み、ドイツ大使館からはドイツ軍の動きを把握してソ連に通報するが・・・

 篠田正浩の事実上の遺作となるべき超大作。舞台は上海、ソ連、ドイツにわたり、決して貧乏臭くはない程度の大作感は備えている。

 ゾルゲの視点をとおしての太平洋戦争前史といった構成で、物語自体は、8・15シリーズの1本といっても過言ではないほどの概観的な描き方で事件の上面をなぞっていく。映画を最後まで見ても、ゾルゲという人物の真のドラマ性というものを感知することはできない。3時間決して退屈はしないが、それ以上の映画でもない。

 近衛文麿榎木孝明が演じたのは見事なはまり役だったが、1シーンのみ登場の東條英機竹中直人が演じたのは興ざめも甚だしい。むしろ、杉山元を演じた麿赤児が適役だろうに。

 また、この映画はフルデジタル映画としての先駆的実験作でもあり、ビデオ撮影により、デジタル合成をふんだんに活用して戦前の日本の町並みを再現している。「ALWAYS 三丁目の夕日」と同じ方法論だが、こちらのほうがスケールは大きく、カットやシーンによって出来不出来のばらつきがあるものの、案外よく健闘している。モスクワの場面は平面的な画合成といった雰囲気だが、上海の町並みのフルショットは見事な出来だし、2・26事件のシーンはマット画とCGと実写の立体的な合成に成功している部分がある。マット画合成ならではの日本晴れの青空が戦前の日本という空気感を象徴しているようだ。

 VFXには、マリンポスト、スペイシィ、日本映像クリエイティブ、凸版印刷、デザインコンビナート、ガーデン、イーファクトリー、日本エフェクトセンター、モーターライズ、SpFXスタジオ等の各社が参加している。

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