マイ・ネーム・イズ・ジョー ★★★

MY NAME IS JOE
1998 ヴィスタサイズ 104分
ビデオ

■アル中から抜け出し、失業給付を受けながら地元スラムに住む若者たちのサッカーチームの監督として活動するジョーは、保健婦の女性と知りあい愛し合うようになるが、チームメンバーの一人が地元のドラッグディーラーから脅迫されていることを知ると・・・

ケン・ローチが、ドラッグに汚染されたグラスゴーのある地区を描く社会派映画だが、脚本がポール・ラヴァーティなので、恋愛映画としても十分よく出来ている。ドラッグの問題自体は、街と人を侵食する悪の実状のリアルな姿としては描かれず、むしろ主人公の行動のための道具立てのひとつに見える。実際、中盤までは類型的な足を洗ったやくざが再びやくざの世界に引き戻される物語かと思った。そこはケン・ローチなのでそういう類型化はしないのだが、一方で、ラストのまとめ方には違和感が残るし、ドラマとしては尻切れトンボの印象が拭えない。

■撮影はケン・ローチ組の常連、バリー・アクロイドだが、室内撮影の照明効果が抜群に上手い。当然ライトが仕込んであるはずだが、自然な暗さと、その中に映画的に浮かび上がるシルエットや表情が深い造形美を感じさせる。DVDだと、多分プリントが明るくなりすぎてこのプリントの質感は減退するだろう。解像度は悪いが、フィルムにおける照明効果を知るには、古いビデオは捨てがたい。

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